ひびは、貴方の心を信じられなった、私の心




私が馬鹿だったの


自分で決め付けて、彼にひどいことをいった


手遅れかもしれない


でも

いいたい

伝えたい

私がまだ、ラビを想っているから







I want it that way
#9 危急



「さぁ!起きて起きて!!朝よ!」
シャッとカーテンを開けてリナリーが元気に宣言した。

まぶしさに目を細めて、は上半身を起こし、目を擦る。
寝起きはいいほうだ。

「朝食食べたら出発出発!」
「え・・?イノセンスの回収は・・?」
「もう行ってきたわ!」

「え?」
は耳を疑った。


(もう行って来た・・)?

「朝早くにね、ちゃっちゃっちゃーと行って来ちゃった。さぁ!朝ごはんを食べたら村を出ましょう!」
予定をスラスラと言うリナリーには瞠目する。
展開が早すぎるのだ。

も服着替えて!」
混乱するをよそに、リナリーはずいとに団服を差し出す。

とりあえず、団服に着替えることにして、は衝立の向こうにノロノロと歩いていった。

その背中を見送りながら、リナリーは昨夜を思い出していた。






昨夜、シーツを変えてもらい、はシャワーを浴びて少し話して寝た。
その時のの顔は、とてもすっきりしていて、嬉しそうで。
リナリーはほっとしたのを覚えている。



そして明日は早く起きて用事を済ませ、一刻も早く教団に入ろうと心に決めていたのだ。



寝ているを起こさないようにそおっと部屋を出て井戸に向かった。
一つだけ青緑色にぼんやり光る石を手にとって、任務終了。


リナリーは楽な任務にルンルンで帰ってきたのだった。






「着替えたよ〜」
ベッドに座って足をぶらぶらさせているうちに、が衝立から出てきた。
そのまま洗面室に向かう。

「あ、まってまって!」
「ん?」
少し眠さの残るようなとろんとした目では振り向く。


リナリーはトランクをごそごそすると、少し大き目のポーチを取り出した。


中から鏡やら何やらを出してベッドに広げる。
「じゃーん!お化粧しよう!」
「へ・・?何で・・突然?」
首をかしげるに、猛然とリナリーは言い放つ。


「決まってるじゃない!ラビに見せるのよ!」
「な、なんで?」
「綺麗になったを見ればラビも喜ぶわよ!」
「わ、私お化粧したことないし・・」
は一歩あとずさった。
リナリーは一歩踏み出す。


「教えてあげるから!」
「でも、黒の教団につくのは明日の昼・・・」


「今日は予行練習!」
壁際まで追い詰められてしまった。



「覚悟しなさい!」
なんだかちょっと違うような言葉を吐いたリナリーの目は光っていた。









ガラガラガラガラガラ・・・・


「よかったねーお弁当いっぱいもらえて!」
「うん」
返事をしたときがたんと馬車が揺れた。
二人は小さい悲鳴をあげる。
小石でも車輪が吹っ飛ばしたのだろう。


御者のおじさんが死に物狂いで鞭をふるっているのか。


リナリがー苦笑いを浮かべた。








明日の夕方、と言っていた馬車だが、リナリーが朝

「急ぎの用があるので、朝のうちに出ます」


と言うと、村長が何か一大事があったとでも思ったのか、信号弾を打ち出して急いで馬車を呼び寄せてくれたのだ。


そこで別にそんなに急いでないです、とも言えず、また、このまま行くと今夜の深夜にはつけるかも、と言う期待から、とリナリーは言わないでいた。



おじさんには悪いが、とにかく、今はラビが恋しくて仕方がないだった。








「ありがとうございました」
「れ、れ礼なんかいいから!早く行きな!」


馬車から降りて、深々と頭を下げた二人をおじさんはせかす。
息が上がっている。


まさに死に物狂いだったようだ。


急に罪悪感を覚え、リナリーとはいつもの二倍の料金を払った。


「じゃあ」
「さよなら」



このおじさんの気持ちを無碍にしないためにも


の足は急がれた。











歩いて三十分。
にぎやかな大きめの町に入った。
リナリーは街中をきょろきょろと見回す。


「この町で連絡を入れることになっているの。えっと・・宿は・・」
「あそことか?」
『Hotel』と看板のかかったこぎれいな宿をは指した。


あれなら電話がある。

二人はその宿に入った。








「おい!おやじ!」
りんごを並べていた果物屋は振り返った。


振り返ると、端正な顔立ちの東洋系の青年が立っていた。
少々変わった身なりをしている。


が、商売っ気が染み付いている男はにこやかに笑った。
「へいらっしゃい」
「客じゃない。ここを二人の黒ずくめの女が二人、通らなかったか?」
「二人???しらねぇなぁ」
「そうか」
言ってきびすを返す青年。
長い髪がさらりと揺れる。


あわてて男は声を上げる。
「ちょ、ちょっとまってくんなせぇ!」
「・・!見たのか?!」


すごい勢いで振り返った青年に、ずいと赤々としたりんごを差し出す。


「声かけてきたのはそっちだ。買ってくれよ」
「・・・・・」


青筋が青年の額に浮き上がる。

青年は腰の東洋剣を無言で抜くと、りんごに突き刺した。
男は手の上のりんごが突然串刺しになったのを見て固まる。


「・・汁っ気がねえ様なスカスカのりんごなんか誰が買うかよ」


しゅっと引き抜くと、青年は足早に歩き出した。


男は売り物にならなくなったりんごを見つめて立ち尽くした。




「ちっ・・あいつらどこだよ・・・」
ぎりと歯をかみ締めるも、それに返事を返すものはいない。













けい

05,08,31