は廊下を歩いていた。
早足で、うつむき加減で。
いつもながら閑散としている黒の教団の廊下。
さびしいと思うのが常々だけれど。
今日は、これでいいと思った。
「うっひっ・・・くぅ・・」
下唇をかみ締めて、おえつを消そうとするも、どうしても口の端から漏れてしまうそれは、後悔の紛れもない証拠。
もう後悔?
だってこれでよかったのでしょう?
うん
そう
でも
でも・・・・
I want it that way
#3 決別
部屋に飛び込んだ。
ベッドに倒れこんで、枕に顔を押し付けるも、おえつは止まらない。
涙が枕を濡らす。
これでよかったの
だって信じられない
分からない
だから
でも・・・・
泣き声だけが響く部屋。
そこに突如、あまりにも能天気な声が下りてきた。
「くーん。くーん。いる?」
コムイの声。
はっとして見回すが、あの白い団服の男はいない。
少し視線を上にあげると、黒いゴーレムがぱたぱたと中に浮かんでいた。
あわてては手を伸ばし、ゴーレムのスイッチを入れた。
「はい」
声が少し震えていた。
コムイのいかにも悲しそうな声がゴーレムから響く。
「ごめんだけどね、急な任務が入ったんだ。すぐ執務室に来てくれる?」
「はい。すぐに」
答えて、はゴーレムのスイッチを切った。
任務だ。
クローゼットに駆け寄り、団服を羽織る。
体に団服の重み。
イノセンスを装備し、ぐいと袖で両の涙をぬぐった。
離れられる
ラビと
嬉しい
そう思ったとき、また涙があふれそうになって、はあわてて洗面室に向かった。
鏡を見ると、目がうっすらと赤くなっている。
何度も顔を洗って、はもう一度、鏡を見た。
・
ラビのことは、忘れよう
任務に差支えがあってはいけない
丁度良い機会だ
心からそう思ったことにして、は部屋を出た。
執務室。
コムイは二組の資料を目の前の二人の少女にそれぞれ渡した。
「はい。これ資料」
「ありがとうございます。」
は受け取り、すばやくぺらぺらとめくった。
「兄さん、ファインダーはいないの?」
リナリーはもう資料の内容を知ってるのか、きょろと見回してコムイに聞いた。
「うん。ほんとはねファインダー一人にエクソシスト一人でもいいぐらいなんだけどね。ファインダーが今負傷者続出でね。エクソシスト二人ということになったんだ」
「そうなんだ」
その間には資料に軽く目をとおす。
スイスのある村の野菜が突然変異。
原因は、ファインダーの調べによると、その野菜にまく水の井戸。
その井戸をくみ上げる時の桶の石が、どうやらイノセンスらしいという事だった。
ファインダーが回収しても良かったが、村人が譲るにあたって、どうしてもかの有名なエクソシスト様を拝みたいと言って聞かないらしい。
「ごめんねぇ。でもさ、多分すぐ終わる任務だから、三、四日で戻れるよ」
それが自分に向けられた言葉だと気付いた。
書類に集中しているふりをする。
「いえ。大丈夫です」
書類に目を向けていた。
から、コムイが視線を送っているのにも、は気がつかない。
「さて、、いこ?」
「うん」
リナリーは好きだ。
あまり少ない女性教団者と言うこともあって、とリナリーは仲が良かった。
地下の出口は薄暗い。
ぴちゃん、と言う水音が響く。
「んじゃ、いってらっしゃい。リナリー、じゅぅぅぅぅぶんに!気をつけるんだよ?」
リナリーの肩をがくがくゆさぶるコムイ。
「分かってるわよ。それより兄さん、仕事してよね!」
「はーいはーい」
聞いているのかいないのか。
そういえば、前の任務のとき、ラビがここから見送ってくれた
ラビが心配してあれこれと聞くものだから、出るのに大分時間がかかったのを覚えている
ラビ
はあわてて頭をふった。
いけない
コムイはくるりとに向き直ると、肩をぽんと叩いた。
「君も!」
「え、あ、はい」
答えて見たコムイの細い目が、一瞬何かを映したような気がした。
でも、それは一瞬のことだった。
ので、は気のせいだと思うことにした。
船に二人の少女が乗り込む。
船頭にリナリーが目で合図をすると、ゆっくりと舟が動き出す。
は振り返った。
コムイが手摺にもたれかかって手をふっている。
そこに、ラビは、いない。
明りはどんどん小さくなって、やがては闇に飲まれた。
        
ラビでてこねぇー!!!
っつーかゴーレムに呼び出し機能とかスイッチって付いているのかどうか・・・(不安)
けい
05,08,08
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