「医療班の結果が出た」

「どうもご苦労様。で?」

の隣にいたのがラビだってんで、悋気を起こしたんだとよ」

「つまり・・ヤキモチ?」

「まぁな」

「やっぱり・・か。・・・・このこと、君には」

「言わない方が良い」

「何で?」

「自分が原因でラビがあぁなったと知れば、は自分を責める。そうすると必然的に」

「ラビ君も悲しむ、か。二人を思えば・・だね?」

「うるせぇ」









I want it that way
#23 食堂





















は病室の前まで来ると、扉をコンコンと鳴らした。
「ラビーご飯」
「おぉ、サンキュー」
中に入ると、ラビは今しがた読んでいたであろう本をパタンと閉じた。

「ラビ、おかゆ飽きたって言ってたでしょう?言ったら、ジェリーさんがチャーハン作ってくれた」
ベッド用の机にお盆を置く。
ほかほかといい匂いのするチャーハンだ。

「やったさー!」
先日、おかゆはもういい、と渋い顔で言っていたラビ。
今は喜々として蓮華を握っている。

数日前と、なんと言う違いだろう。

夢中でかきこむラビに、は微笑んだ。


「ラビ、あのね・・」
「ん?」
ラビはもぐもぐと口を動かす。

は一瞬間をおくと、首を振った。
「・・・。やっぱりいい。あ、そうだ、聞いてよ。私の部屋、ドアが壊されてたって言ったじゃない?」

「ん」

「アレ、犯人誰だったと思う?」
「ん?」

「リーバー班長とコムイ室長!まったく。信じられる?」
「んーん」

「昨日新しい扉がついたから別にいいんだけど・・・あ、で、医療班の方々はなんて?」

「あと二日したら病室から出てけって」
もぐもぐと方頬を膨らませてラビは答えた。

「良かったね。ブックマンに感謝しなくちゃ」
「ふん。ジジイはでしゃばりすぎなんさ!」
ぷいと横を向いてまたチャーハンをかきこむ。

はニヤリと笑う。
「照れちゃって」
「照れてないさー!」
「ご飯粒飛んだわよ」












「あ、神田」
「・・か」

確認するように呟くと、神田はまた机上蕎麦に目を戻した。

は何かを思いついたように小さく口を開けると、神田に再度声をかける。
「ここ、いい?」
「・・・勝手にしろ」
顔も上げずに言うと、神田はずそっと蕎麦をすすった。

「お言葉に甘えて」
は神田の席の隣にお盆を置いた。
お盆の上には、ふわふわのオムライス。




「神田、ありがとう」
「あ?」
神田は怪訝な声を上げて、今しがた口に入れようとしていた蓮根の天ぷらを口から離した。
「助けてもらったから。あの時」



あの時は二つある。

一つ目は、何にも知らず、ただラビに会いたいと急ぐ帰路で。
神田は情報を持ってわざわざ迎えに来てくれた。


二つ目は、銃を向けられたとき。
絶体絶命の時に、神田は命を救ってくれた。




「・・ふん。エクソシストに死なれたら困ると思っただけだ」
言うと、蓮根にかぶりついた。



神田は人に干渉しない、人の干渉を許さない。
冷たく、味方でも邪魔なら容赦なく切り捨てる。

それが黒の教団一般常識内での、神田。


その神田が、急いで知らせに来てくれた。
イノセンスを発動して、助けてくれた。



だから


「ありがとう」
「言ってろ」

一度も顔を上げない神田。
きっと照れてるんだろう、と思い、は微笑む。
そして自分の食事に取り掛かろうとスプーンをとった。





「あの・・さ、神田」
「あ?」
オムライスが半分ほど減った頃。
神田は蕎麦があと一口だ。

「その・・・」
「・・・さっさと言え」

しばらくした後、ようやくは口を開く。

「ディアドロ、って言う人、どうなったか知ってる?」
神田は思わず静止しそうになったが、何とか手を動かす。

「・・・・ディアドロって、誰だ?」
何とか平静を保とうとするが、冷や汗は拭きでるわその所為で上手く蕎麦をつかめないわで神田はてんぱっていた。

「神田、知らないの?」

「あ、あぁ」
何とかつまんだ三本の蕎麦をすする。

「そっか・・」
残念そうに呟いて、はもう一度スプーン握りなおして、オムライスの端を削った。

神田はが納得してくれたことにほっとして、やっと残りの蕎麦をすする。
そしてお茶の入ったコップを手に取るとぐいと飲み干した。

ダンとコップを盆の上に置くと、席を立つ。


「神田!」
振り返ると、の目が目に飛び込んできた。





「知ってるんでしょう?」






懇願するような目。

神田は無意識に口を開いていた。




「お前の所為じゃない」




そう一言言うと、きびすを返す。
そしてあっという間に食堂を出て行った。





















『お前の所為じゃない』

あれは、どういう意味だったのだろうか。
一件まったくかみ合ってない会話。

でも・・・

(神田は、知ってたんだ)

きっと、すべて



じゃあ、彼ならば・・・





















けい

06,01,22