ラビを守る
私は
信じてるから
愛してるから
だから
がすぐ来るであろう衝撃と痛みに身を硬くした、その時だった。
「動くな!」
え?
「災厄招来!界蟲」
まさか
「一幻」
ドンという銃声が響いた。
I want it that way
#21 銃傷
「何があった?!」
その声には起き上がった。
見ると、ディアドロは『蟲』に足から口までがんじがらめにされている。
床からはかすかな煙が立ち昇っていた。
その手にある銃口は、縛られている所為で床を向いている。
助かった・・・
っ!ラビ!
「ラビ!ラビ!」
床に伏したラビのお腹の血は止まらない。
どくどくと流れる血に、は服の裾を破って止血を試みる。
しかし血は止まるどころか、その布に赤いしみを広げてゆく。
「・・・腹、撃たれたのか?」
荒い息で汗だくになりながら、壁にもたれかかっている人。
神田。
先ほどの『蟲』は、神田のものだった。
「神田?神田着いてたんだ。何で戸口に立って・・?!どうしたの?!!」
リナリ−は息を呑んだ。
ラビが床に倒れ、荒い息を繰り返しながら血を流しているのを見れば、無理もなかった。
それに、隣には神田の『蟲』に縛り上げられた男。
リナリーは混乱しながらも、の横に着く。
はリナリーを見上げ、悲鳴のような声を上げる。
「どうしよう!どうしよう!!!」
解らない
どうしよう
ラビが・・ラビの血が止まらない・・・!
リナリーも戸惑っていた。
まず、この状況をよく把握できていないのだ。
その時、乾いた音が響く。
神田はに近づき、混乱するの頬を打ったのだった。
神田は荒い息ながら怒鳴った。
「落ち着け馬鹿!まずは医療班・・ブックマンだ!ブックマンよんで来い!」
・・そうよ、こんなことしていられない
ラビを助けなくては
は唇をかみ締めて頷くと、立ち上がった。
リナリーは一瞬遅れて我に帰ると、あわてて立ち上がる。
「わ、私が行く!」
私のほうが早いから、と言うが早いか病室を飛び出して行った。
「神田、ラビをベッドにのせるの、手伝って」
「あぁ」
神田は六幻を下ろすとラビの肩に手をかける。
「っ!」
ラビが一瞬眉を寄せてうめいた。
「そっとね」
言いつつ自身も、もう片方の肩をとる。
神田がちらと横目でを見る。
の顔は引き締まっていた。
何事も見逃すまいと、唇をきゅっと結び、眉を上げ、目をしっかり開いていた。
「男は?どうする」
神田が蟲によって口までふさがれた男をあごでしゃくる。
「・・・外に転がしといて。逃がさないで」
ラビをベッドに乗せるとは自身の服の裾をまた破いた。
そして腹の包帯をとり、新しい布で上から押さえる。
かすかに出血量が減った。
そう自分に言い聞かせつつ。
「君?!」
「?!」
リーバーとコムイが飛び込んできた。
それと同時にリナリーとブックマンも病室に入ってきた。
「どいてくだされ」
神田がベッドの脇から退くと、ブックマンが進み出て、ラビの様子を見た。
「包帯を取ってくださいますかな、嬢」
が布をはずすと、ラビがまたうめいた。
「銃・・ですかな?」
はコクンとうなづいた。
「・・・まずは弾丸を抜くことからやります。嬢は見ないほうがよろしいかと」
言って袖に腕を沈めると、次の瞬間びゅっと鍼と小刀を出した。
「大丈夫です。・・・ラビは・・ラビは大丈夫でしょうか?」
「愚問ですな」
ブックマンは笑った。
「この小僧と、私の鍼を相手とするには」
        
腹の傷は即死には至らないものの、致死率は60%を越えるそうです。
あと銃弾は貫通していた方が治療にはよいらしいですが、貫通してると治す時にグロテスクすぎるので止めました。
本当なら腹を打たれたら、回転して柔らかい方へ動いて腹の中をかき回しますが、まぁ運良く血管と血管の間を縫って止まったということで。
いくら仮想でも19世紀にこんな手術できない!と思われるかもしれませんが、まぁ、ブックマンだから。
けい
06,01,07
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