映し出された映像。
男の、狂おしいまでの愛による狂気そのもの。
I want it that way
#18 螺旋
「っ!リーバー君!」
「は、はい?!」
突然の怒鳴り声にリーバーが面食らって返事を返す。
「一緒にきて!」
言い捨てて自身はさっさと扉へ向かう。
「え?は?あ?」
何が起きているか解らない。
自分は今成分のおかしな変成岩について調べていたのに。
それでも瞬時に体が対応してしまうところが、もうヘビーワーカーといえるだろうか。
リーバーはコムイのバンと扉を閉める音で崩れた書類と共に立ち上がった。
「わりぃ、すぐ戻る」
隣のジョニーに言うが、ジョニーはまったく反応しない。
そのわけを知っているから、リーバーはジョニーが返事をしないのを気にせず、書類をそれなりによせて急いで出てゆく。
後に残ったのは屍たちの最後のブーイングだけだった。
扉を出て、左右に首を振ると、米粒みたいな白いものを発見した。
速い、と思いつつ、自身もそこに駆けて行く。
近づくほどに、コムイが誰かと話している、そしてそれがリナリーだということに気がついた。
リナリーは任務に行ってたはずだ。
「おかえり」と声をかけようとして、リーバーはそれをやめた。
二人はものすごい勢いで話をしていた。
「何?なんでそんなもの!」
「解らない。でもそれで彼が何かしようとしていることは確かだ」
「ど、どうしよう!!」
「・・彼は見たかぎり、正気とは思えない。リナリー、すぐに彼の部屋へ行ってくれ」
「わかったわ」
言いながらきびすを返すリナリー。
それにコムイは苦しそうな声で付け加える。
「抵抗するようなら・・・・仲間に対するイノセンスの発動を許可する」
リナリーは振り向いた。
泣きそうな顔。
それだけでコムイは身を引き裂かれそうな思いがする。
しかしリナリーは顔を引き締め、神妙な面持ちで頷くと駆け出していった。
コムイはさっと振り返った。
唖然とするリーバーにきびきびという。
「リーバー君!!僕らも行くよ!」
言い捨てて自身もまた、駆け出す。
何がなんだか分からないが、緊急事態だ。
リーバーはあわててコムイを追いかけた。
「・・・リナリー、遅いなぁ。」
ソファで足をぶらぶらさせて、は呟いた。
ちょっと、とリナリーは言ったのに。
「・・ラビがご飯待ってると思うんだけど・・・」
三日も食べていなかったのだから、早く何か食べてくれるまで安心できない。
そう思うと、の心は急かれた。
「・・・書置きすればいいかな・・」
リナリーのデスクのペンを拝借し、メモに書き付ける。
『ごめんなさい。先に病室へ行っています』
そしてはリナリーの部屋を出た。
とりあえずは食堂へ。
それから、病室へ。
は歩き出した。
「なんすか、一体」
走りながら、リーバーは隣をつっかけで走るコムイに声をかけた。
いつものへらへらした表情ではない、コムイに。
「・・・ファインダーの、ディアドロ、って言う人、知ってるかい?」
「・・・・まぁ」
ディアドロといえば一年ぐらい前に来た、新米ファインダー。
だが、これといって目立った話もない。
「彼が?」
「最近同行したファインダーやエクソシストから、彼が変だって話を聞いてたんだ」
「変?」
「そう。」
コムイは唇をかみ締めた。
「こういう仕事だからね。ナイーブになることはよくあるから、大丈夫かと思ってたんだ・・でも・・・」
ファインダーの一人が、苦笑しながら言った。
あいつは恋をしている。その所為で、狂っちまっている、と。
その人に早く会う為に早く帰ろうと、突然まだ任務中のテントから逃げ出したというのだ。
捕まえても、多少暴れたらしい。
ただ、その時のエクソシストが早くAKUMAを倒したおかげで、問題は解決したらしいが。
精神的な病。
そう感じたから、コムイはゴーレムを部屋付きの見張りにつけた。
そして先ほどのゴーレムの映像。
教団内で、あってはならないはずの武器の所持。
銃。
「銃?!」
リーバーは思わず声を上げた。
コムイは無言で頷く。
どこで手に入れたかは解らない。
しかし、彼がそれをあの正気とは思えない様子で・・・・ん?
「っ!」
「?室長?」
コムイは立ち止まった。
リナリーが帰ってきているということは君も一緒のはず。
そしてさっき会った瞬間、リナリーは言っていた。
『ただいま。ラビはもう大丈夫よ』、と。
ということは、君がラビに会ったということだ
あの時、僕はディアドロ君のことで頭がいっぱいだったから・・念頭においてなかった・・
もし彼が帰ってきている君と接触していたら?
正気でない彼が・・!
「大事なことを、僕は・・!くっ!」
コムイは隣にあった階段を上り始めた。
「え?ちょっ!室長!どこいくんすか?!ディアドロの部屋へ行くんじゃ」
「君だ!」
「?」
「彼の恋の相手は君なんだ!」
どうして気がつかなかった?
解っていたのに
彼が君に懸想していること
だからこそ、リナリーと任務に出したのに
その間に、何とかしようと思っていた。
彼の部屋には、リナリーが向かっている。
彼が銃を手に取ったのは?そうする気にさせるほど、気を高ぶらせるものは?
彼がもし、部屋を出ているとすれば・・
君の部屋だ。
「君が危ないかもしれない!・・・・僕の所為だ」
解っていたのに
話の大筋を掴んだリーバーはぐんとコムイを追い抜いた。
「ちんたらしてる暇はないでしょう。今は責任より解決です」
リーバーの言葉に励まされ、頷くコムイ。
そして階段を一段飛ばし始めた。
「あんらぁちゃん!帰ってたの?!ラビちゃんが・・!」
「あ、大丈夫です。で、あの・・ラビのために何か・・お腹に優しいもの、作ってもらえますか?」
三日ぶりの食事だから、胃が驚かないものを。
ジェリーは一瞬ぽけっとした顔をしたが、すぐに握っていたお玉を放り出した。
の言葉の中に、もうラビが大丈夫だということを感じ取ったジェリーは、にっこりと笑ってなべを取り出した。
「まっかせて!」
ジェリーは今もらった注文を放り出して、ラビのためのご飯を作り始めた。
リナリーは部屋を確かめた。
この部屋番号、確かに間違いない。
鍵がかかっているだろうことを予想して、ドアを蹴破った。
「え・・・・?」
空だった。
誰もいない真っ暗な部屋。
リナリーは慎重に神経を尖らせながら、壁をまさぐって電気のスイッチを押した。
誰もいない。
あるのは家具と、テーブルの上のとけた蝋燭。
そして
「・・・?」
の写真だった。
それ以外は何もない。
「ディアドロ君が、銃を所持している」
先ほどのあせったコムイの声。
教団内で、それもファインダーが個人的に銃を所持していることは、まったくの違反だ。
所持する理由がない。
あるとすれば、誰かを傷つけるということだけ。
リナリーは写真を手に取った。
手が震える。
「まさか・・・を・・?」
理由はわからないが、ここにの写真があるということは・・・!
リナリーはきびすを返した。
が心配だった。
(は私の部屋だから・・大丈夫だとは思うけど・・!)
リナリーは写真を放り出して走り出した。
コムイとリーバーは階段を上り、の部屋へ。
リナリーは今、自分の部屋へ。
は今、食堂にいる。
男は・・・・?
        
2話から出てたのに今まで名前の出なかったかわいそうなディアドロ君!
もちろんオリキャラです。
サスペンスの音楽かけて読むとドキドキする(かも知れない)話になりました。
なんかミステリーみたいになっちゃったかな・・。
けい
06,01,04
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