「私がね、悪かったの。」
「何が?」
「ラビを信じて・・なかった・・」
そう、すべてはあの始まりの一言。
私の一言。
I want it that way
#16 謝罪
「ごめんなさい」
好き
身勝手でごめんなさい
突き放して、そしてまたその絆を求めてる
「ごめ・・な・・さ・・」
ぼろぼろとの両目から涙があふれ始めた。
耐え難いという様子ではぎゅっと目を閉じる。
「だから、あんな・・・事・・言っ・たの・・・!」
信じてなかったから
「好きなのに・・信じてなかったから・・あんなこと・・」
ラビは片手でその涙をぬぐってやった。
そして優しくささやく。
「ってぇことは、今は俺のこと、好き?」
急いでは頷いた。
「今はもうさよならって言わねぇさ?」
または頷いた。
それを見て、ラビは顔をほころばせた。
「よかった、嫌われたと思ったさ」
「そん・・なこと!」
しゃくりあげながらがラビを見上げた。
「は綺麗だから」
「・・え?」
ラビは片手での手をぎゅっと握りなおし、もう片手をの頬に添えた。
やっと取り戻した、宝物。
いとおしむ様に、そっと撫でる。
「は綺麗で、俺は汚いから、だから、駄目になったかと思った」
「そんな・・!わ、私はラビが、私の事、好きじゃないんだと思って・・!」
その言葉にラビの顔が怪訝になる。
「なんで?」
「そ、それは・・」
『帰ってきてすぐに会いに来てくれなかったから』
理由はこれなのだ。
が、なんだか・・
(子供の我侭みたい・・)
「なーにーさ?!腹割って話そうっていっただろ?」
「う・・ん」
「言う!さぁ!」
が様子を伺うようにちらと上目でラビを見ると、ラビはしっかとこっちを見つめている。
じっとこちらを見ている、目。
大好きな、目。
「ラビが」
観念したようにがおずおずと話し出した。
「ラビが・・帰ってきて・・その・・すぐ私のところに来てくれなかったでしょう?だから」
「っ!あれは!」
言いかけてラビはハッとする。
『部屋に行ったら警戒されると思ったから』
(・・まるで俺が警戒されうるような事しに行こうとしたみたいさ?)
がいぶかしむ。
「・・なに?」
「いや、あれは・・えー」
「言ってよ、さっきも腹を割って話そうって言ったでしょう?!」
私に、と今度はが、じとりとラビを見る。
(うぅ・・・)
言えない。かっこ悪くて言えないが、せっかくのこの場で秘密を作ってはすべてが駄目になる。
もう二人の世界を裂くような事はしたくない。
ラビは必死に頭を回す。
「・・・・部屋に行ったら、が嫌がるかと思ったんさ」
(うまい事言ったぞ自分!)
「・・なんで?」
「へ?」
「だから、何で?告白したの私なのに」
「え、いや、だからあの・・・」
「私は来て欲しかった。」
寂しかった
「恋人なら、帰ってきたら、すぐに会いに来るものでしょう?なのに・・こな・・いから・・」
今までの余韻の所為か、の涙腺はとてもゆるかった。
「ごめん、、ごめん」
は泣きながら。
ラビはの手をぎゅっと握って。
今二人は同じ事を考え、想った。
私たちは、すれ違っていた。
想いは
同じだけ大切で
真実で
なのに
すれ違っていた
ただ、それだけ
ぽたぽたと涙を落とす。
ラビはそっとの顔を包み込む。
そして懇願するようにささやく。
「・・好き。が一番、好きさ」
は目を見開いた後、またどっと涙をあふれさせた。
心だけじゃ収まりきらない歓喜。
それが涙となってあふれ出した。
初めての言葉。
ずっと欲しかった
でも
「もういいの」
「え?」
「ラビを信じてるから。言葉なんかなくたって」
ラビは私のために三日三晩も何も口にしなかった。
そんな彼を、どうして疑うというのか。
私はラビの『心』を信じていなかった。
それは、言葉がなかったからだと思ってた。
でも私も一緒だった。
何も言葉なんて渡してはいなかった。
「信じてくれるさ?」
が好きだった。
とてもとても、きれいだ。
だから自分はそんなにつりあうのか、不安で、心細くて。
そんな俺の心の不安定さが、を寂しくさせた。
信じられなくて当たり前だ。
あんなに走ってきてくれた。
俺のために
そして好きだといってくれた。
これからは胸をはって叫ぶことが出来る。
が好きだと
は、俺の恋人だと
「うん」
今はもう何もなくとも、私はラビを信じられる。
言葉をくれたから?
いいえ
ラビが私を好きでいてくれる
想ってていてくれるから
そう、信じられるから
感じられるから
「私も、好き」
言うとラビは本当に嬉しそうに笑った。
私はそっとラビのおでこに口付ける。
ラビの下ろした前髪が私の顔をくすぐる。
それがなんだが嬉しい。
そして二人でクスクスと笑った。
その時、部屋のドアがコンコンと鳴った。
        
けい
05,12,20
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