ひとしきり嗚咽と共に言葉を吐き出したあと、は動かなくなった。
「・・・・?」
の背中に手を回してぎゅっと抱きしめると、現実という感覚が戻ってくる。
の胸が上下していて、あぁ、眠ってる、と思ってすこし嬉しくなった。
耳をくすぐるのすぅすぅという吐息さえも、ラビの心を明るくした。
が いる
好きだと
何度も言ってくれた
いいのか?
駄目だったはずなのに
傍にいるのが
俺で・・?
そこまで思って、ラビは一つの考えが浮かんで自然に口元が笑みを作るのを感じた。
良いも悪いも
今
ここで
好きと言って貰えたから
俺のために泣いてくれたから
それだけで十分
そしてもう一度、自分の上にいるを抱きしめて、ぬくもりを感じた。
I want it that way
#15 抱擁
「ぅ・・ん」
「・・?」
「ラビ・・?ってあぁっ!!」
あわててラビの上からは飛び起きた。
「ラビ?!どうして?なんで?!」
「えっと・・なにがさ?」
「私確か神田から訊いて飛んできて、病室でラビが!!」
今さらながらにおたおたと動き回るを見て、ラビはくすりと笑った。
「そう!何で食べないの?!三日も!」
「・・・」
「何考えてるのよ!」
言い出してまたはポロポロと泣き出した。
かすかに唇が震えているのは、涙を流したくないと思いつつも、溢れて来るそれを止められないから。
「どうしてこんな馬鹿なことするの・・!」
「っ!が!」
ラビはの言葉を遮り、すこし声を落として続ける。
「が・・いなくなって・・どうでもよくなって・・食べもん食べたくなくなって・・」
「・・・」
「もう嫌になって・・なんつーかさ」
ラビががりがりと頭を掻く。
私が
言ったから
ラビの傍からいなくなったから・・・?
じゃあ
「・・・今は?」
「え?」
私が帰ってきたから
「・・・お水、飲む?声かすれてるよ?」
「・・・喉渇いてきた」
にっとラビが笑うと、は傍らのグラスに水差しから水を注ぐ。
ラビの頭をすこし持ち上げると、グラスをラビの口に当てた。
口に水を含んだのを見て、はグラスをはずす。
ラビの喉が、ゆっくりと水を嚥下した。
「・・・生き返る」
「何にも食べてないからでしょう!」
何かもらってくる、といって出てきかけたの腕を、ラビが掴んだ。
「その前に、話せん?」
は少しひるんだような様子を見せたものの、覚悟したようにベッドの傍らのスツールに座った。
それを見て、ラビはもう約三日動かしていなかった上体を起こそうとして、痛みに眉をひそめる。
「いつっ・・」
「無理しないで」
がやんわりと肩を押したが、ラビはひじをついて何とか上体を起こした。
少し咳き込んで、口を開く。
「ごめん」
言うとも、ごめんといった。
すれ違い
その穴を埋めるために。
ラビはの手を取ると、包み込むように握った。
        
甘っ!
けい
05,11,28
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