ねぇ
君は
僕のもの
他の人を見ないで
僕だけを見てて
ね?
分かるだろ?
I want it that way
#12 交錯
ヴン、と音がしてリナリーがイノセンスをとく。
目の前には黒の教団内部へ続く階段。
けっして広くないそこへ、いくら早いといえどリナリーのイノセンスを使うことは不可能だった。
はリナリーから手を離すと一目散に階段を駆け上がる。
「あ、ちょっ!!」
リナリーがあわてて続く。
足がもつれる。
何度も何度もこけかけ、そして何度も何度もこける。
膝から血がにじむ。
後ろから続くリナリーが見ていて痛々しくなるほどだった。
が、そんな痛みさえも、の頭には届いていない。
ただただあの鮮やかな夕日の色の髪を求めて。
はもう尽きかけた体力を気力で駆り立てた。
ラビ・・・・
・・?
ラビはうっすらと目を開けた。
頭の中は透明。
・・・
笑ってる姿が見えたと思って。
腕を前に出して、掴もうとする。
が、それはむなしくも、空をきる。
なんで・・?
思う。
そして、絶望。
あぁ
もう行ってしまったのだ。
自分は、もう手放したのだ。
思い出して一筋流れた涙が頬を伝うのと同時に、またまぶたが下りた。
黒の教団の廊下。
息も荒く、もつれる足を何とか前に出しながらは走る。
リナリーもそれに続く。
は今、まっすぐ医務室に向かっていた。
(ラビ、ラビ、ラビ、ラビ・・!)
後二つ角を曲がれば後はまっすぐ。
もうすぐ・・!
そう思った矢先だった。
「さん!」
突然横から飛び込んできた影に、手前ではよろめいて止まった。
影はファインダーの男。
任務に行く前に話した男だが、今のの頭にそんなことなどない。
男は意気揚々と嬉しそうにに話しかける。
「お久しぶりです!任務から帰ってきたんですね?!」
「・ご・・め・・どい・・て・・・」
息が荒く、声がまともに出ない。
が横をすり抜けていこうとすると、男はさっと動いてそれに立ち塞がる。
「汗でせっかくしたお化粧も崩れてますよ?お化粧直した姿がみたいなぁ・・そうだ談話室で一緒に休みましょう?お疲れのようですし」
今のには不必要な申し出。
見かねた後ろのリナリーが声を上げる。
「ごめんなさい!いかなきゃならないところがあるの!どいてあげて!」
その声に男はちらりとリナリーを見るが、興味がなさそうに冷たい視線を一つ投げかけると、また笑顔でを見た。
「僕、ずっと待ってたんですよ?」
「どい・・て・・お・・・願い・・」
息も絶え絶えには言う。
「ほら、やっぱりお疲れなんですね?てさぁ行きましょう」
男は人の話も聞かず自身でそう完結すると、に手を伸ばした。
は男の手をどける。
その手を上げ下ろしする体力さえ今にには乏しく、男の手をはじくような形になった。
男は手をはじかれ、きょとんとした目でを見た。
は足を踏み出した。
「ご・・めん・・ラビが・・待っ・・てるから・・」
言って一歩、また一歩と踏み出しながら勢いをつけては走り出す。
リナリーもそれに続く。
男はやはりきょとんとした目で自身の手を見た。
さんが
僕の手をはじいた・・・?
にわかには信じられなかった。
でも・・確かに・・・さんは僕の手に・・・触って・・
思考が別の部分に集中し、男は口角を不気味に吊り上げる。
でも・・なんで・・はじいた・・?
そう思ったとたんまた口が元のとおりに戻る。
男は思考をめぐらせた。
ラビ
そう
さんは、確か、ラビといっていた。
ラビ・・?
あのエクソシストの?
『ご・・めん・・ラビが・・待っ・・てるから・・』
何故さんはあんなやつのところへ行くんだ?
僕と一緒に楽しく談話室でお話しする予定だったのに。
ラビ。
僕とさんとの仲を引き裂こうとする悪魔。
悪魔・・・AKUMA?
AKUMAは破壊しなければ・・。
そう。世界のために。強いてはエクソシストのさんのためだ。
よし。
思考回路がどこかで欠けている男は自室へ取って返した。
大切な人を守るという、男なら誰でも考える思い。
その回路が一つ、180度別の方向へ行っている事を男はもちろん、もリナリーも知らなかった。
医務室のドアが見える。
ドアにすがるようにして飛びつくと、はドアを開けた。
「ラビ!!!!」
出た声の源は、想い。
        
けい
05,10,23
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