「・・・悪かった」
このとおり、と神田は頭を下げた。
+School Days+
#8 重要機密?
向かいに座ったは、とんでもないと首を振る。
確かに多少はまだむかついているが、勘違いと言うことなら仕方ない。
それに生徒会長に頭を下げられるなんて。
「い、いいです!もう・・。疑いは晴れた訳ですし。」
「ごめんね、ちゃん。こいつ狙われててさ」
の隣にのラビはにこっと笑って言った。
「狙われてる?」
「そう」
「・・・誰に、ですか?」
神田がとっさに口を開く。
「ば」「言えない」
横で台詞をとられた神田がラビを睨む。
ラビはただニコニコと笑っている。
「え・・・あ、そうですか」
「ラビ?」
「文句は後できくさユウちゃん」
ラビは神田の言葉をさえぎった。
ラビの表情から色よい返事が帰ってくると思ったは、動揺を隠そうと顔に作り笑いを浮かべた。
ラビはそれに気づいているのかいないのか、ニコニコと笑みを崩さない。
「ごめん。でもこれは生徒会の重要機密なんさ」
「は、はぁ」
なんか秘密組織みたいだなぁと思いつつは曖昧に肯いた。
「あ、そうだ、自己紹介まだだったさ。ラビっす」
「ラビ・・・えっと何でしょうか」
ファミリーネームを尋ねた。
しかしラビはぺらぺらと手を振った。
「んや、ただのラビ。ここの2年E組。ほんで会計兼書記さ」
よろしく、とフレンドリーに差し出された手を、は握った。
「ちなみに、かいちょーはC組さ」
親指でさされた神田は、ちらとこちらに視線をなげた。
その後、は目を冷やすための氷と、温かい紅茶をいただいた。
氷は冷たかったけれど、暖かいアッサムのミルクティーがそれを緩和してくれた。
そして、気が付けばもう日が傾いているころで。
ラビ先輩は本当に話しがうまいなぁ、でも神田会長はずっと仏頂面だったな、と二つのことを思った。
実際、ラビ先輩と話しながら黙々と机で仕事をする神田会長をちらちらと盗み見したが、表情が和らいでいたことなど一度も無かった。
「お茶、ありがとうございました!おいしかったです」
「いいんさ。またおいで」
「はい!」
は扉前で二人の先輩に一礼すると、引き戸をしめた。
建前上あぁ返事はしたが、この部屋にくることはもうおそらく無い。
思いつつ、しんと静かな廊下を歩く。
廊下を染めている、窓から差し込む激情の赤に、は窓の外を見た。
夕日はすでにビル街よりも下に沈んでいるようで、夕日の残り香であるオレンジと空を覆い始めた濃紺が目に映る。
ちらほらと一等星も光りだしていた。
なんだか今日会ったあの二人の先輩のようだな、と思った。
「生徒会の重要機密」
ふと頭の中を、あの言葉がリフレインした。
神田会長は・・・誰に狙われているのだろうか
・・・・・・・・・・・・・・・・・や、やくざさんと・・か?
いや、ありえる!だってあの気迫!やくざがほって置くはずが無い!!
きっとあれだ・・やくざさんにスカウトされて断ったとか・・・・・
それで組に追われてるんだ・・・!ジャパニーズマフィアだ!
一人で興奮していると、神田会長のあの怖い顔が思いだされてはぎゅっと目を瞑った。
多大なる勘違いを残し、の生徒会とのファーストコンタクトは終了した。
「何が重要機密、だ。」
「あれぇ?そんなこと言ったっけ?」
「・・・何考えてやがる糞兎」
「面白いこと、さ」
「・・てめぇ、変なこと考えてねぇだろうな?」
「気になるさ?あの子」
「・・・・うちの生徒だからな」
「・・・へぇ」
ぷいとそっぽを向いてしまった神田の背を、ラビは頬杖をついてニヤニヤと眺めた。
        
けい
06,04,30(08,04,02改)
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