校舎の隅の一室。
三階の、一番東の教室。
そこが生徒会室。
「はいれ」
がらりと開けて先に入るように促され、はびくびくしながらもそれに従った。
「あ、ちゃん」
「あぁっ!」
中のソファーで、くつろいでいる人がヒラと手を振った。
あのオレンジ頭のマフラーをした人だった。
+School Days+
#7 生徒会室
生徒会室は、普通の教室ほどの広さがあった。
が、そのほとんどを資料がつめこまれた棚が占めているため、実質教室の半分ほどの広さしか機能していない。
さらにソファーが二つ、そして机が三つ。
狭いわけではないが、窓が無いと息苦しいと感じたことだろう。
そのソファーの端にちょんとすわって、は采配を待っていた。
向かい側にはあのオレンジ頭の人我が物顔でソファーに陣取り、面白そうにこちらを見ている。
そして肝心の会長はと言うと、なにやら机をごそごそと引っ掻きまわしていてこっちはほったらかしだ。
怖い。
でも逃げ出すような勇気も度胸も無くて。
あぁ、向こう(イタリア)では呼びだしのひとつも受けたことが無いのに・・・
だいたい日本はうるさいんだ。
駅のホームのアナウンスはやたらとでかいし・・・
「」
「はいぃ!」
名前を呼ばれては引きつった返事をした。
神田会長が仁王立ちしている。
「お前、誰に頼まれた?」
「は?」
「どこの奴だ?」
わけが分からない。
小首をかしげて神田を見やった。
だが、顔を見た瞬間肩を震わせた。
「っ!」
軽く息を飲み込んで、反射的に膝上の手を握りしめた。
神田の射るような目と向きあってられなくて、視線を外す。
その降ろした視線の先に、神田の靴が映った。
「言え」
顔を上げることも出来ず、はただただ沈黙の中、体を堅くする。
何を言われているのか、本当に分からない。
でも弁解の言葉が届くとは思えないほど、神田の空気はナイフのようにとがっていた。
「・・・・てめぇ、良い度胸だな?」
低い言葉にはさらに震えあがる。
空気が痛い。
怖い。
眉を潜めて、怒っている神田が怖い。
なんで?どうして?
違うのに
知らないのに
弁明の言葉は震える口からは出てこない。
そのかわり、まぶたが熱くなってきた。
ぎゅっと目をつぶると、生暖かいものが自身の頬を伝う。
怖い
「え?ちょ。おい!何で泣くん」
その時、その空気をパンとはじくような声が割り込んできた。
「なぁなぁユウちゃん。本当にそうなのか、聞いたさ?」
「あ?」
場の空気に合わない変に抜けた明るい声に、神田は不機嫌そうにその方向を振り返った。
そこに居たオレンジ髪の人はこの雰囲気などまったく感じていないようで。
「その子、さっきから一度もしゃべってないさ。もしかしたら、違うかもしれないっしょ?」
勢いをつけてソファから起き上がり、ラビは神田の隣に並んだ。
そして神田とは正反対な優しい目をして、の目線に合わせるようにしゃがむ。
「・・あぁあぁ。泣かないで良いから。大丈夫さ。な?」
よしよしと頭をなでられて、の目にはさらに涙が浮かぶ。
「ちゃん?聞くけど、誰かに頼まれてユ・・じゃなかった、神田カイチョーつけてたの?」
は無言で首を振った。ラビはさらに質問を重ねる。
「んじゃ、なんでついてったの?」
は言葉が出なかった。
涙と、なんとか抑えようとしているおえつが混じっているせいで。
神田はラビを睨む。
「あの馬鹿どもに頼まれたに決まってんだろうが!」
違う
知らない・・・!
「が・・・学校が」
なりふりかまってられず、は途切れ途切れに声を出す。
ラビと神田はやっと声を出したを見つめる。
「分からなくって・・・それ・・で同じ制服だから・・・・だから・・・!」
そこまで言って下を向いてしまったの頭を、ラビはぽんぽんと撫でた。
『もういいよ』
その大きな暖かい手のひらがそう言っているようで、は微かにほっとした。
「道分かんなくて、ついてけば分かると思ったんさ?」
の頭が縦に揺れた。
ラビが先ほどとはうってかわった瞳で神田を見上げた。
神田はその視線を受けてばつが悪そうに視線をそらす。
そんなラビと神田のやり取りにも気付かず、はただなけなしの理性で顔を覆ってしゃくりあげた。
        
これ・・ラビ夢・・(ごふっ
いえ、神田夢です。
けい
06,04,25(08,04,02改) |