「な、ななな」
がさがさと垣根を探る。
「・・・ない」
は泣きたくなった。
と言うかもう泣いていた。
ホール脇の垣根。
が確かにカバンを突っ込んだ場所に、それはなかった。
+School Days+
#6 探し物
「・・・な・・なんで・・・・・カバンなんかとってくのよぉ・・・」
ぱっと見ただけでは、分からないような場所なのに。
持っていってもメリットの有るものなんて入っていないのに。
独り言と分かっていても止められないそれ。
生徒手帳。
書類。
どれも再発行には時間がかかる。
それにカバン自体もそんなに安いものではない。
サブバックではなく、皮製の本カバンをとられたのだ。
一度は探った場所を、はそれでも手を突っ込む。
「しょっぱなから・・こんななんて・・最低・・・」
おばあちゃんからもらった、お守りの懐中時計も入ってた。
ねじを巻けば、オルゴールが鳴り、からくりの絵が動き出す、小さな小さな懐中時計。
あれは何物にも変えられないのに。
慌てていて、あれだけ忘れてしまっていたのだ。
無いって分かってても、手が汚れると分かっていても、枝や葉が腕にピリとした痛みを残すと分かってても。
はそれでも手を突っ込んだ。
垣根の端まで探した。
葉っぱにぽたぽたと、の涙が落ちた。
「おい」
声を掛けられて肩が跳ねる。
すぐに振り向けなかったのは、泣いていたから。
慌てて腕でぬぐって振り返ると、目の前にカバンが有った。
「・・・・・・カ・・カカカカバン!!!!」
は両腕で抱きついてそれをもぎ取った。
へなへなと座り込んでカバンに顔を押し付ける。
新品の皮の匂いがする。
(よ・・よかった・・・)
よかった。
カバン。
そこでふと思った。
何故この人が持っているんだろうか。
盗んだはずなら返してくれるはずも無いし。
拾ってくれたのだろうか。
って言うか誰だろう。
「あ、あの!」
とりあえずお礼を言おうと顔をあげた。
「・・・・・・げ」
「恩人に対する第一声それか?あ?」
腕を組んで自分を見下ろしているのは、今朝壇上から新入生を見下ろしていた人物。
「か、神田ユウ・・・」
「『会長』だ。上級生を呼びすてとはいい度胸してんな、てめぇ」
神田の眉がぴくりと跳ね上がる。
怒られる!と反射的に思ったは。
「ご、ごめんなさいぃ!!」
言いながら右向け右して四つん這いで逃げ出そうとする。
が、その襟首をがしっと掴まれた。
「ぐっ!」
喉を締められて呼吸に詰まる。
「逃がすか」
掴んだのは言わずもがな、生徒会長で。
そのまま腕を掴んで立たせると、ずるずるとを引きずっていく。
「ど、どどどこいくんですか?」
生徒会長に引きずられていくと言う事は・・・罰則とか・・・?
「ちょっと生徒会室に来い」
『ちょっと生徒会室に来い』
と、いうことは。
=『ちょっと校長室に来なさい』=怒られる
「ご、ごめんなさい!すみません!」
「謝るぐらいなら、はなからするな」
そうピシャリと言いのけられて、はぐうの字も出ない。
そしては強制的に生徒会室に連行されていったのだった。
        
探し物はカバンと、あと会長からすればヒロインちゃんの、両方をかけてみた。
けい
06,04,14(08,04,02改) |