帰ってからも神田会長がちらついて、結局英語の勉強はできなかった。
及第点ぎりぎりいけたかぎりぎりダメかという感じ。

テストが終わって机の上にぐだっと上半身を横たえると、リナリーが苦笑いをしていた。
多分テストの結果を察してくれたのだろう。
私もリナリーのテストの結果は察していた。
きっと満点だ。













+School Days+

#32 不審な視線









テストが終わった瞬間、は机に崩れ落ちた。
どうやらテストがうまくいかなかったよう。
私の視線に気がついたがひらひらと力なく手を振る。
それが白旗のようで、私は苦笑いをこぼした。


昼休み。
机にへばりついたまま動く様子を見せないに、お弁当片手に歩み寄る。
人影に気がついたのか、声をかける前には顔を上げた。
その目もとにはうっすらと隈が浮かんでいる。

「リナリー・・・」
「お疲れさま」
「ほんっと、疲れた・・・」
「そんなに勉強してたの?」

の前の席の三島君がお弁当を持って出て行ったのを確認すると、私はその席を拝借した。

「ううん・・・勉強できなくて無理やりしようとしてでもできなくて気がついたら5時だった」

雀がちゅんちゅん鳴いてた、と儚く続けてはまた机に突っ伏した。
なんだかかわいそうで、その頭を撫でる。

「ま、とりあえずお弁当食べない?」
「食べる」

瞬時に頭をはね上げたは鞄をまさぐる。
が、取り出したのはいつものお弁当が入った包みではなくお財布。

「今日お弁当作ってる時間なかったから、購買行ってくるね」
「うん、いってらっしゃ」

い、まで言う前に私の神経を何かが走った。
前後左右に気を巡らせる。

いる。
廊下からこちらをずっと見ている。
この感じはただ見ているだけじゃない。

(監視されてる・・・?)

まさか。
そんなはずない。

でも―――・・・

私はの胸元を見た。
そこで輝いているのは白い校章。
それはリナリーの胸元にも輝いているものだ。

(もしかして・・・これが、噂の)

、私もついて行くわ!」
「え?あ、うん」

あ、ジュースでも買うの?とのほほんと尋ねるに適当に相槌を打って、私はカバンから財布を取った。
ちらりと視線をやると、廊下から見ているのは男子生徒だ。
それも二人。

「いこっか」
「うん」

とつれだって教室を出る。
廊下を歩きだすと後ろの二人は案の定ついてきた。

(どっち・・・?)

私か、か。それとも両方か。
わからない。
けれど、これはきっと生徒会がらみだ。


生徒会に入ったとき、神田会長が言っていた言葉が蘇る。


「それから周囲に異変があった時は、ラビか俺にすぐに知らせろ。いいな?」


あれは何か知っているそぶりだった。
まるで、なにか異変があることを確信しているような。

(・・・それに)






交流会でリナリーが話していた上級生たちが言っていた言葉も引っかかっている。




「ほんとリナリーちゃんってかわいいよね!!」
「ほんとに!モデルとかやってたの?」
「い、いえ、全然、そんな」
「それから噂で聞いたんだけどさ、入学試験も上位だって聞いたよ!」
「うっそー!すっごー!!」
「でもさーだったらやっぱり生徒会からお呼びが掛かっちゃうんじゃない?」
「あー・・・たしかに」
「やばいよね」
「やばいやばい」
「・・・なにがですか?」
「あのね、リナリーちゃん、生徒会に誘われても入っちゃだめだよ」
「うん。だめだめ」
「?」
「去年ね、一年生で生徒会に誘われた子何人かいたんだけどね」
「いたいた」
「3人だったっけ?神田会長とラビくんと女の子一人」
「うん。でもね、神田生徒会長の入会が決まったとたんその女の子がね―――」






リナリーはその言葉の先を思い出して眉根を寄せた。

横で眠い目をこすりながらあくびをするはきっと何にも気が付いていないのだろう。

(・・・まずは、確かめなくちゃ)

もしかしたら気のせいとか、生徒会とは関係ないということもある。
神田会長に報告するのはそれからだ。












どうでもいいですがサブタイトルの『不審な視線』が何度打っても予測変換されずに『不審な四川』とでてきます。



けい

09,09,23