「会長、次お願いします」
「あ、会長、私も」
「あぁ。・・・ラビ、おまえはなにやってる」
「ソファの座り心地のチェック」
「殴るぞ。さっさとクラブ費とクラス費の照会やれ」
「へーい」
+School Days+
#29 コムイ、襲来
「ふぅ」
「お疲れさん、二人とも」
リナリーとが顔を上げると、二つのカップを持ったラビがいた。
「ほい、紅茶。熱いからきーつけるさ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございまーす」
受け取り、湯気をかいだ。
いい匂いがする。
「打ち込み、調子どう?」
「だいぶなれました」
にっこり笑うリナリーは、の二倍の量をすでにこなしている。
本当になにをやっても完璧な美少女だった。
「表計算なんて久しぶりでしたけど、なんとか感も戻ってきました」
「?リナリー、表計算なんてやったことあったの?」
「うん。兄さんが泣きつくから、何度か手伝ってたことがあるの」
高校入ってからはやってないけど、と言って、リナリーは優雅に紅茶を飲んだ。
は猫舌のため、まだ香りしか味わえない。
「兄さんかぁ・・・いいなぁ、私一人っ子だからなぁ」
「そう?」
「うん。小さい頃は兄弟ほしくて泣きわめいたことあったよ。お兄さんがいるってうらやましすぎる」
「まぁね、兄さんがいてくれて嬉しかったことの方が多いけど・・・でも、やっぱりちょっと、ね」
苦笑いしたリナリーに、は首を傾げた。
「ちょっと?」
「うーん・・・・ちょっとね、心配性なの、兄さん」
「いいじゃない!それだけリナリーがかわいいんだよ!」
「いや、うん、まぁ・・・」
「いいなー!私も兄さんほしいなぁ」
「あ、じゃあ俺ちゃんの兄ちゃんやるさ!」
はーいとラビが手を挙げた。は思わず笑う。
「やった!お兄ちゃんができた!」
「俺のことはラビ兄さんね!あ、リナリーちゃんも俺のことそう呼んでも」
ふざけてそういいかけた、瞬間。
突然だった。
「だぁっめだめだめだめーーっ!!!!」
叫び声とともに、生徒会室の扉が割れんばかりの音を立てて開いた。
神田会長が舌打ちしたのが聞こえる。
「リナリーは僕の妹だよ?!リナリーがお兄ちゃんて呼んでもいいのは僕だけなの!」
拳を振り上げて宣言したのは、眼鏡をかけた男性だった。
毛先が外にカールした髪が、本人のあまりの勢いのせいかうねうねと揺れている。
「に、兄さん!」
真っ赤な顔をしてリナリーは机をたたいた。
「どこでもかまわずそういうこと叫ぶのやめてっていっつも言ってるでしょ?!」
「だ、だってリナリー!僕、リナリーをとられるんじゃないかって・・・・とられる・・・・?!」
コムイはびしっとラビを指さした。
「ラビ君!リナリーはお嫁にはやらないぞ!」
「はぁ?」
コムイはさらにラビに向かって何か訳の分からないことを叫びながら怒ったり泣きそうになったりしている。
リナリーは傍らで呆然としているに耳打ちした。
「・・・あれが『兄さん』よ・・・」
どう、と言われて、はなにもいえなかった。
とりあえず弟がほしいな、と思った。
「そうかい、君がちゃんね!」
話はリナリーから聞いているよ、と言って手を差しだしたコムイは、普通に見えた。
握手して、は頭を下げる。
「はい。リナリーとは仲良くさせてもらってます」
「うん。これからもよろしくね。それから生徒会にようこそ。顧問のコムイ・リーだよ」
にっこり笑った目の前の人は、本当に普通だ。
リナリーのことになると豹変するらしい。
「リナリーも。そんなに僕と一緒にいたいならそう言えばいいのに」
「そうね・・・」
先ほどの収拾をつけたのはリナリーだった。
ぐったりとソファにもたれかかった様子が、いかに大変だったかを物語っている。
「さてさて、神田君、新会員達のもろもろの用事は済んだのかな?」
「あぁ」
パソコンから目も上げず、神田会長は素っ気なくそう返した。
(にしても、会長、あの騒動の中黙々と作業してたなぁ・・・)
やっぱり会長ともなると周りに流されない。すごい。
「そっか。じゃあ僕はそろそろ教員室に戻るよ。会議の最中だったんだ」
「「えぇ?!」」
リナリーとの両方から悲鳴が上がる。
が、コムイはせっぱ詰まった様子もなくなははーと頭をかいている。
「いやさ、なーんか悪い予感がしてとんできたんだ。案の定、だったけどね。一大事だった」
横でこちらもぐったりオレンジジュースをすすっているラビを、コムイはキッと見上げた。
ラビはぷらぷらと前で手を振る。
”もう絶対言いません”
「さて、じゃあまたね、ちゃん。神田君、眉の皺直さないと溝になっちゃうよ。ラビ君、次はないからね」
部屋にいるそれぞれに声をかけ、最後にリナリーに向き直る。
「リナリー、今日の晩御飯はシチューがいいな」
にっこり笑ったコムイに、リナリーは力無く頷いた。
いや、そうするしかなかった。
        
題名の雰囲気はエヴ○で。
けい
08,04,13 |