昼休み、リナリーとはお弁当を広げる生徒を横目に教室を出た。
向かうは生徒会室。
中では既に二人がソファーに座ってお弁当を食べていた。
そこでがラビに事情を話すと、とたんラビは目を輝かせる。
「おぉ!美人さん大歓迎!ね、かいちょー」
ラビが同意を求めた先には、会長が目もあわせずに箸を動かしている。
パクリ、と煮物を食べ、神田は口を開いた。
「お前、名前は?」
「1年C組のリナリー・リーです」
「・・・リーだと?」
神田の視線がはじめて二人に向けられる。
驚いたように見開かれたソレの意味を、リナリーとラビだけは知っていた。
+School Days+
#27 シスター
神田の眉がきゅっと曲がる。
「おい、お前、もしかしてコムイの・・・?」
「彼女はコムイ先生の妹さんさ。目にいれても痛くないって感じで可愛がってる」
何故かラビが答えて、ね、とリナリーを見ると、リナリーは苦笑いをしつつも小さく頷いた。
そこであせったのは一人だった。
「え?え?リナリーのお兄さんここの先生なの?!」
「あれ?ちゃんも一回会ってるでしょ?」
「?」
「ほら。昨日のメモ。最後に持って行ってもらったの、コムイ先生さ」
「あ」
思い出した。
職員室でコーヒーを飲んでいた、眼鏡の先生。
(・・・あれかぁー)
「もー、言ってよー!」
ぱんぱんと肩を叩くと、リナリーはうなだれた。
「・・・言いたくなかったのよ、あれが兄さんだなんて」
「へ?」
リナリーの言葉に、以外の二人は遠い目をした。
「え?何?何?」
職員室で会った時は、普通の先生だと思ったけど。
「じゃ、ここにサイン宜しく」
「・・・あの、こんなに簡単に決めちゃっていいんですか?」
リナリーが生徒会に入りたいと言ってからまだ5分も立っていない。
普通は選考やらなんやらがあるのではないだろうか。
「ん、いーの、いーの。うち、万年人手不足だから」
「はぁ」
「それにさ、リナリーちゃんが入ってくれればコムイ先生も喜ぶし」
「・・・」
(兄さんのことだから“そんなに学校でも僕と会いたかったのかい?”とか・・五月蝿いんだろうなぁ・・・)
はぁ、とリナリーはため息をついて、書類にサインした。
(でもを守らなきゃ)
昨日の先輩達は、何がいけないのか教えてくれなかった。
はじめは他の役員が駄目なのかと思ったが、この二人以外役員はいないというし、神田会長が優秀なのは周知の事実だ。
(・・・じゃあ、この人・・・?)
探るようにラビを見つめていると顔を上げたラビと目が合った。
にこっと笑われて、つられてこちらも微笑み返してしまう。
「どうかしたんさ?あ、なんかわからないことあった?」
「い、いえ・・・」
「そっかそっか。じゃ、もうOKだから。はい、これ校章と腕章。腕章はイベントごとの時にしか必要ないから、学校のロッカーとかに入れといてくれれば良いさ」
「はい」
「ちなみに、君は会計ね。ほんでちゃんが副会長ってことで」
「「えぇっ?」」
リナリーとは二人同時に叫んだ。
「い、一年生は雑務とかでは?!」
「わ、私副会長なんて無理です!」
ラビはぴらぴらと手を振る。
「んや。だーいじょーぶだって!俺とユウもついてるし。な、かいちょー」
神田はお弁当を包んでいる最中だった。
そしてラビに目もくれずに一言。
「さっさと飯食って仕事しろ馬鹿兎」
「へぇーい」
ラビがパンを手に取ると、今度は神田がこちらに向き直った。
「ラビが言った副会長だとか会計だとか言う役職名はどうでもいい。今うちはとにかく人手が欲しい。とりあえず、今日の放課後から来てもらう」
「「はい」」
「それから周囲に異変があった時は、ラビか俺にすぐに知らせろ。いいな?」
リナリーの顔はこわばり、は首をかしげた。
「それはどういう・・・?」
「とにかく、異変があったら知らせろ。隠すな」
「は、はいぃ・・・」
気おされて黙るの横で、リナリーはラビを見た。
パンをもしゃもしゃ食べているラビの、片目がこちらに向けられる。
柔らかく細められたその真意を、リナリーは測りかねていた。
        
けい
08,04,03
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