何故こんなにもイライラしている、俺は。

そう思いつつ、ただ少女を屋上から出来るだけ離したい一心で歩きつづける。
無理やり引っ張ってきた少女は俺の足の速さについてこれてないようで、微かに駆けている。

―――――歩みを緩めてやるべきだ。

そう頭の端で“俺”が言う。
でもイライラがそれを邪魔して。

生徒会長として、常に冷静で居なければならない。
常に公正で、感情に流されない。

なのに。


結局、どこまでも進んで。








どこまでも、青くて。















+School Days+

#25 青二才













(いたいいたいたいいたいっ!)

ギリギリと握られている手首は痛いし、会長の足は速くてついていくのがやっとで。
それでも一言も文句を言わずについていっているのは、一度も振りかえりもしない会長の背中が怖くて。

きっとどこか人気の無いところで怒鳴られるのだろう。
せっかく生徒会の一員にしてもらったのに、一日でこの失態。

もしかしたら、生徒会役員にと言う話も白紙になるかもしれない。



がんばろう、と思ったのに。
成績のこととか抜きで、そう思ったのに。

なさけなかった。

自分は何しているんだろう。
仮にも生徒会の人間が、立ち入り禁止の屋上に無断で入るなど。

生徒会の一員と言う意識が低かったのだ。責任の重大さに気が付いていなかったのだ。
だからウォーカー君が屋上に上がるのを止められなかったのだ。

「う・・・・ひっくう・・・うっ・・・」

突然聞こえた泣き声に、神田はぎょっとして振りかえった。

「ごめ・・・なさ・・うっひっく・・う・・・」

肩を震わせて泣いているのはで。
神田には“二度目”と言う言葉が頭をよぎる。

また、泣かせてしまった。

・・・・」
「ごめん・・なさいぃ・・ひぐっ」
「・・・もういい。ただ二度と屋上には行くな。・・・いいな?」

はこくんと肯いた。

怒るつもりだった。
当然だ。
生徒の模範となるべき人間がルールを破ったのだから。

(・・・・・早朝の屋上で、男と二人で・・・だ)

お前、本当にあいつに連れ込まれたのか?
何で二人っきりであんなところに居たんだ?
なにしてたんだ?

それらの言葉を、神田はぐっと飲み込んだ。
これは“生徒会長”の範疇外だ。

口を挟むべき問題ではない。

言えることは屋上に立ち入ったことに対する注意だけだ。
もどかしさを感じながらも、まだ泣きつづけるの頭に手を置く。

「・・・いいかげん泣きやめ」
「・・・・・ごめんな・・・さいぃ・・・うぅ」
「ラビとの約束があるだろう。腫れた目で会うつもりか?」

すると、落ち着いてきたらしく、おえつが小さくなり、やがて鼻をすするにとどまった。
はセーターの袖で目をこすった。
その手首を神田がやんわりと掴んで降ろさせる。

「こするな。跡になる」

そう言って、の白い頬の涙を親指で軽くすくう。


小さな顔だった。



剣道部の輩に比べて、格段に小さく感じた。













やっぱり神田はおにぶちゃんだと思うのです。



けい

07,02,04(08,04,02改)