ジリリリリリリリリリリ………
鳴り響く朝の警告音。
指しているのは6時。
響きはじめてから数秒後、布団からにゅっと伸びた手が少しさまよって、力任せにそのボタンを叩く。
ぴたりとその音はやんだ。
「・・・・んん・・・ぬむ・・・・・・」
は肘をついて上半身を上げた。
半目でベッド横のカーテンを開けると、一気に部屋に光が差し込む。
眩しさに眉をひそめるも、すぐに視界は鮮明になる。
空は快晴。
「ん・・ぃよぉし!」
伸びをして一つ気合いをいれると、はベッドから飛び降りた。
+School Days+
#22 決意の朝に
7時。
は黒団駅についた。
こんな早朝から学生が居るはずも無く、電車内は遠方に勤めているらしいサラリーマンが数人座席でうたた寝しているだけだった。
もそれに混じって眠りこけ、危うく乗りすごすところだったのを閉まる直前に飛び降りたのだ。
そして今、あの並木道を歩いている。
早起きした日は何だか清々しい。
これだけ人気のない道を歩いていては、ことさらにだ。
ラビとの約束は8時15分。
まだ一時間ほど余裕がある。
で、あるにもかかわらず、低血圧のががんばって早起きしたのには理由があった。
(ふふっふふっふ)
は一人でほくそ笑んだ。
昨晩、神田に途中まで送ってもらい、家に帰ったはお風呂で考えていた。
生徒会役員になったからには、何かするべきだ。
今までのことを思い返してみると、差し引きしてもご恩がある気がする。
神田は会長であるし、ラビは書記。
自分にもなにか役割は与えられるかもしれないが、勉強が苦手なに会計やら何やらを出来るわけがない。
そこでふと、『お風呂マジッ●リン』が目に入った。
はひらめく。
「そうよ!掃除よ!」
決意の声はお風呂にわんわんと響いた。
(生徒会室のお掃除をして私の株はアップ!)
そう単純に考え、馬鹿みたいな早い時間に学校に行くことに決めたのだ。
あの書類がごちゃごちゃした生徒会室を掃除するにはそれぐらいかかるに違いない、と検討をつけて。
どこから掃除しようなどと考えていると、桜が前髪に引っかかった。
もう散り始めている桜は所々青々とした葉が見えている。
(そう言えば、会長と会ったのはあの日がはじめてだったなぁ・・・)
その美しい黒髪に、はじめは女の人だと思っていたのだ。
(でも・・・)
昨日、支えてくれた手も、体も、すべて男の人のものだった。
その時のことを思いだし、赤くなった顔をは振った。
(ば、馬鹿!何考えてんの、私!)
そして桜を振り払うように走りだした。
生徒会室前で、は息を整えていた。
疾走してしまったせいで、また左足がずきずきと痛みだす。
(あー私って馬鹿・・・)
そう思いながら、はドアの取っ手に手をかけた。
ガキッ
金属がぶつかる音がして、扉は開かない。
もう一度、今度は精一杯の力をこめて引っ張ってみた。
開かない。
(そ、そう言えば、会長、昨日鍵閉めてなかった・・・?)
青くなったはポケットから懐中時計を取りだした。
針は7時5分を指している。
少なくとも、ラビ先輩が来るまでには一時間はある。
「ど・・・・どうしよ・・・・・」
「どうかしたんですか?」
廊下に整然と響いたのは、少女とも少年とも取れない声。
振りかえったの目に飛びこんできたのは、少年。
窓から指しこむ朝日に反射させた白い髪を揺らす、天使のような風貌。
「・・・ウォーカー君・・・?」
「おはようございます。さん」
そして彼はまさに天使の微笑みを浮かべた。
        
けい
06,12,25(08,04,02改)
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