は顔を上げて、壁のシンプルな時計を見た。
大きな文字盤に、太い針。
それらは今が6時14分21秒であると言うことを告げている。
リナリーにはすでに『先に帰って!ごめん!』と言うメールを送り済みだ。
『明日は一緒に帰ろうね!』と言うメールが帰ってきたから、待っているという心配はない。
はあれから延々と雑用をこなしていた。
ホッチキスの次はペンを握り、その次ははさみを握り、今はパソコンのキーボードを叩いている。
抗議したかったが、当の神田がの何倍もの早さで一言も発することなく仕事を続けているのを見て、結局何も言えずにいると気がつけばこんな時間だった。
さすがにもう帰りたかった。
大体、自分は生徒会役員でもなんでもない。
ただ引っ張りこまれた一般人だ。
(あーあー・・・おじゃる丸見れなかった・・・)
そっとため息をついたとき、がらっと大きな音がした。
反射的にそちらをみると、小首をかしげたオレンジの髪の人が立っていた。
「ありゃ?えと・・・ちゃん?」
(マフラーにバンダナに垂れ目のオレンジ!!)
「・・・!ラビ先輩!」
「どったの、こんなとこで」
「・・・・・」
あの微妙に長い出来事を一言で返事するのはの国語力では難しかった。
+School Days+
#18 救世主
「ふーん。そりゃかいちょーが悪いさ」
「だからこうやって世話してるだろうが」
神田の眼光をものともせず、ラビはソファーに座ってオレンジジュースを飲んでいる。
その向かいにはラビに誘われたが座っており、自分が見られたわけでもないのに神田の目つきにビクッと体を固めた。
「こういうのは世話って言わないの。こき使ってるって言うの」
ラビは親指でがやった仕事の山を指した。
(・・・くぅぅ!そうです!そうなんですラビ先輩!もっと言ってやってください!!)
オレンジジュースをごくごく飲みながら、はラビにエールを送る。
このジュースはラビがコンビニで買ってきた紙パックのを半分頂いた。
なにより、今こうやってを休憩に導き、あまつさえ神田を責めてくれているのだ。
(ラビ先輩サイコー!!)
神田はいらついた様子でペンで机を打つ。
「生徒会は人手が足りねぇ。ついでだから良いだろう」
「人手が足りないのは誰のせいさ?ユウちゃん?」
のらりとした口調でどすっと刺され、神田はうっとつまった。
そして話を変える。
「・・・おい、あいつがくじ持ってた理由、分かったぞ」
「ん?嘘?まじ?」
ラビはソファーの背に身を乗り出した。
(くじ?)
は氷の残ったグラスを机に置いた。
くじといえば、先ほど神田に怒鳴られたばかりである。
「おまえ、一年の中にあのくじ入れただろう」
「そう!そうさ!そうすりゃ一石二鳥って・・・」
言いかけてラビはふと止まる。
そしてくるりと向かいに座ったに目を留めた。
「・・・もしかして」
「はい?」
「『67』のくじ引いたのって、ちゃん?」
「あ、はい。でも美人な先輩に取られちゃって・・・」
それで教室にいたんです、と続けた。
きっちり三拍、間が開いた。
そしてラビが突然ソファーから立ち上がって声を上げた。
「よっしゃ!!!」
ガッツポーズを決めるラビに、は目を見開いた。
なにが『よっしゃ』なのかが分からない。
くじを取られ、先輩と仲良くなる機会を逃したからすれば残念なのに。
「ちゃん、あのくじ、俺らのテーブルだったんさ!」
「え、えぇ?!」
それは知ってた。
だが終わったことだ。
「ほんでさ!」
ラビはぐっと親指を突き出す。
「来た子は生徒会役員にご招待って予定だったんさ!」
「・・・・は、はぁ?」
「ということでちゃん!君、生徒会役員ね!」
「・・・・・・え・・・・・」
        
救世主という題名でアレンを想像なされた方ごめんなさい。
救世主はラビなんです、この場合。
早くリナリーとアレン出したいなぁ・・・
けい
06,11,06(08,04,02改)
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