「・・・あんの野郎・・・!」

神田はこぶしをにぎりしめた。

心当たりが有りすぎた。

あいつと同じテーブルにはならないと太鼓判を押したラビ。
それに反してしっかりと『67』と書かれた、生徒会印つきのくじを携えてあいつは来た。

ラビはきっと、『67』を一年生のくじの中に紛れ込ませたのだ。
そうすればあいつはこれない。
しかしあいつはまんまと『67』のくじを探し出し、奪い取った。

こいつが元の持ち主だとすれば、すべて合点がいくのだ。

「あ、あの・・・?」
「お前もだ!馬鹿か!何ぼーっとしてんだ!」
「ひぃ!」
「ちっ」

(し、舌打ちされた・・・!)











+School Days+

#17 生徒会室再び







神田は仕方ない、とため息をついた。

あいつがこいつから奪い取ったと言う証拠がどこにもない。
第一、今戻ってもあのテーブルには誰も居ないはずだ。
ラビは上手く逃げただろうし、あいつが誰も居ない席に用があるとは到底思えない。

神田も戻る気はさらさら無かった。
をホールに戻してからは、生徒会室でたまった書類を処理をこの隙に少しでも進めておくつもりだった。

神田は横目でをみた。
その左足のハイソックスは、控えめに膨らんでいて。
神田はもう一度ため息をついた。

「しゃあねぇ。お前、生徒会室来い」
「え?えぇっ!」

突然下された決断に、は声を上げた。
しかし神田はそんなこと気にもせず、たんたんと続ける。

「ホールに戻っても仕方ねぇし、一人で教室に置いとくのは不安だ」
「不安?」

聞き返すと、神田はすっとの左足を指差した。
あ、とは声を上げる。
確かに、また痛みだしたりなんかしたらは這いずって遠い保健室に行かなければならない。

会長に傍に居てもらったほうが良いのだ。
先ほどの超絶技巧を思いだしたはそう納得し、小さく肯いた。

「じゃあとりあえず、お前の教室行くぞ」
「?」
「カバン取りに、だ」
「・・・・??」














「それとそれとそれ。三つまとめて右上をナナメに一つで綴じろ。」
「・・・はい」
「ちゃんと角は揃えろ」

神田はからせっかく止めた書類を取り上げ、ホッチキスのお尻でびっとそれを外す。

「やり直せ」

またつき返され、はあわててそれを受け取る。

生徒会室にまた来るとは思いもよらなかった。
それもお手伝いをする羽目になるとは。

私を気遣って椅子に座らせてくれたらしいが、動ける手は動かせといわんばかりに大量の書類とホッチキスを渡された。
怪訝そうに見上げた私に、神田はさも当然のように言ったのだ。
“手伝え”と。

「全部均一になるように」
「・・・はい」

先ほどから会長は姑のようにちまちま言ってくる。
はっきり言ってうっとおしい。

こっちは手伝ってやってるのに。

「さっさとやれ。次が待ってるぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」

従順に答えたは涙を飲んでホッチキスの芯を足した。
その時。

「いつっ・・・・!!!」

突然のうめき声に、は振り返った。
書類に目を通しているはずの会長は、机に肘をついて頭を落としている。
その肩は、心なしか震えているような気がした。

「・・・会長?」

気分でも悪いのだろうか。
の呟きにも、神田は動かなかった。

「あの・・・」

「なんでもねぇ」

何かを振り払うように首を振った神田はきっぱりとそう答えた。
彼の手は、何かを支えるように自身の背中にまわされている。

「背中がどうかしたんですか・・・?」
「気にするな。さっさと仕事しろ」

の心配をよそに、会長はまたてきぱきと仕事を開始する。
その様子にそれ以上追求することも出来ず、もまた書類を手に取った。



報告書に目を通しつつ、神田は自身の背骨に走ったかすかな痛みに眉をひそめた。













なんだかんだ言いつつ会長は世話焼きです。


けい

06,10,21(08,04,02改)