こんな日がいつかきてほしいと、そう願っていたのは事実だ。
大好きな人と・・・そう。

でも会長はそんな人じゃない!

否定する声が木霊するの心。
それに反して、鼓動は早鐘を打っていて。

顔はきっとトマト状態。
目も潤んできたかもしれない。

不思議。

こういう事は好きな人と以外は嫌だと思っていたのに。
大事なファーストキスなのに。

多分、あれだ。きっと会長が美形だからだ。
こんなかっこいい人にキスされて嬉しくないはずがないからだ。

もし私の理想通りならば、会長は唇を重ねる一歩手前でこう囁くはずだ。

“Ti amo...”

「お前、唇切れてねぇか?」
「は?」











+School Days+

#16 ティ・アーモ










「血ぃ出てるぜ」

神田はほれ、とに唇に当てていた親指を示した。
確かに、その親指の頭にはうっすらと血が付いている。

「言わねぇとわかんねぇだろうが。ったく」

イライラした様子でそう言い、神田はまた引き出しをガタガタやりだした。

は放心する。


は?
なんて?
今なんて?

え?
嘘?
何今の

アモーレって言った・・・よね!うん!うん!

アモーレになんか付属品が付いてたから違うように聞えただけなんだ!

“アモーレ切れてねぇか?”
・・・・・・・・・・・違う違う違う違う!!!


“唇切れてねぇか?”



“アモーレ”なんて、言ってない。






会長はただ私の唇の傷を気にしてただけで。

「お、あった」

神田はに軟膏を差し出した。

「塗っとけ」

(・・・・・・・・超絶勘違い・・・・・私の馬鹿)

怒涛のように襲ってきた羞恥と先ほどの名残で真っ赤に染まっている顔をそむけたまま、は軟膏を受け取った。
















「お前、何組だ」
「はい?」

軟膏を塗っていた振り向いた。
会長がまた何か書いている。

書いている・・・?

ぴしり、とは止まった。

そうだ、退学・・・・!
アモーレなんて言ってる場合じゃなかった!!

「か、会長!何でもしますから退学は!」
「あ?退学?」

そこではうっと詰まる。
この会長の“あ?”は怖い。
怖いがしかし、ここでふんばるか否かで自分の学園生活は決まるのだ。
はぐっと軟膏の入ったビンを握りしめた。

「なんでもします!だから退学は!」
「退学?寝ぼけたこと言ってねぇで、さっさとクラスと名前言え」
「・・・退学じゃないんです・・・か?」
「何で退学になんだよ」

神田はイライラとペンで机を打つ。

「だって、何か書いてるから、てっきり退学かと・・・それにさっき退学にするとか言ってたから・・・」
「お前、馬鹿か。俺の一存で退学なんてできねぇよ。これは怪我した奴の報告書。保健室で治療した場合、これを書く決まりだ。覚えとけ」
「・・・C組のです」

(・・・・・・・また勘違い・・・・・)

はがっくりと肩を落とした。











「じゃあお前、そろそろホールにもどれ。もう足はいけるだろう」
「何でですか?」

小首を傾げるに神田はペンをしまって一言。

「交流会」
「あ」

思わずは口を開けた。
神田はその様子にやれやれとため息をつく。

「戻れ。一年は全員参加の決まりだ」

(・・・そういえばリナリーはまだホールだよね・・・)

可愛い可愛いと上級生に連れ去られた友人を思い浮かべ、はふと頭によぎるものを感じた。

(・・・あ!!!)

日本美人が頭の中で高笑いする。

(・・・そういや私、席がない・・・)

だから一人で教室に居たのだ。
そこでは神田をちらと見るが、さっさと出ろといわんばかりにすでにドアの前に仁王立ちしている。

「会長・・・」
「あ?」
「あ、あの、戻っても席が・・・」
「席?お前、クラスのくじ引き引かなかったのか?」
「ひ、引いたんですけど・・・」

口篭るに、神田は眉をしかめた。

「なんだ?」

は少し迷って、これは不可効力だから怒られる心配はない、と口を開く。

「実は・・・」















やっと会長に本名が知れました。


けい

06,09,27(08,04,02改)