Vorrei imparare dal vento a respirare,
ボクは学びたい。 風からは 呼吸することを。

dalla pioggia a cadere,
雨からは 落ちることを。

dalla corrente a portare le cose
潮からは 物を運ぶことを。 

dove non vogliono andare
行きたくないところでも運んで行く。

e avere
そして見習いたい。

la pazienza delle onde di andare e venire,
波の辛抱強さを。 行って戻って・・・・

 
 








+School Days+

#12 ティロマンチーノ



















は歌を口ずさんでいた。

教室の窓から滑りこむ風を顔に受ける。
柔らかく優しい、春の風だった。

「Ricominciare a fluire・・・.(また流れ始める・・・)」

イタリアの歌。
向こうのラジオ放送で知ったものだ。

多少は古い歌らしい。
が、緩やかなメロディと甘やかな優しい声。
はすぐに、この歌をメモに取った。
CDを買い求め、そして何度も聴いた。

その歌が、この穏やかな気候にとても似合っている気がして。














ここなら聞いているものは無い。
ホールは見えているとはいえ、それなりの距離がある。

の歌声など、ホ−ルには決して届かないだろう。
まして、この校舎には誰も居ない。


誰も、聞いていない。


は声のボリュームをほんの少しあげた。















「・・・何が大丈夫だ、ラビの奴・・・!」

神田はご立腹だった。
しかし柱に隠れている、それも生徒会長の身としては早々大声もあげられない。

(絶対大丈夫だと言っただろうが!!)

神田はいらだち紛れに柱を蹴った。
もう古い柱の塗装がペリ、とはがれる。

そこでふと考える

(・・・あの女どっからチケットを手にいれたんだ?)

ラビが大丈夫だと言ったからにはきっと最善の手を尽くしたはず。
だから神田もラビの言葉を信じたのだ。
神田は考え込んだ。

そのとき、ふと。

「・・・・・・なんだ?」

神田はきょろと周りを見まわした。
だが、誰も居ない。

当然だ。
今学校の人間は皆ホールに居るはずだった。

しかし、神田の聴覚はその微かな音を聞き取った。
途切れ途切れに耳に届くその音。

神田はもう一度きょろと周りを見まわした。
そしてそぉっと柱の影からホールを見る。
あの女が追いかけてくるかと、様子を伺っていたが、もう大丈夫そうだ。

「よし」

一人そう言って、神田は自身の耳を頼りに歩き出した。

風がふわりと、神田の髪を一筋さらった。













は気分爽快だった。
この高いところから、大声で歌える。
そして周りには誰も居ない。

楽しい。
率直にそう思った。

は歌がうまいわけではない。
超絶音痴と言うわけでもないが、それでも中の下だと自負していた。
自身それを知っていたから、人前で歌うことが好きではなかった。

しかし歌うこと自体は好きだった。
そんなにとって、ここは最善の舞台。




Un aereo passa veloce
(飛行機が一機すっと通り過ぎる)

e io mi fermo a pensare...
(そしてボクは考えるのをやめる・・・)






その目に、人の形をしたものが映り、その人物がこちらに目を向けるまでは。














出ました、イタリア語の歌。
どうしてもイタ語の歌を出したくて、一週間ほどネット上を探し回りました。
素敵な歌ですので、機会がありましたら、どうぞ聴いてみてください。


けい

挿入歌:Imparare dal vento - By Tiromantino 訳 HideS


06,08,20(08,04,02改)