入学式から一週間。

クラブの勧誘。
教室周り。
身体測定その他もろもろ。

授業に加えて午前に午後にと色々な行事が入っており、一年生はてんてこ舞いだった。








+School Days+

#10 交流会へ















「おはよう
「おはよぉ・・・リナリー」

声をかけられ、はぬぼーっと手をふった。
爽やかにリナリーは首をかしげた。

「元気ないわね、どうしたの?」
「だって・・もう疲れて・・・もう別府の湯じゃ癒されない・・・」
「は?」
「いや、なんでもない・・あ、そうだ、英語の予習やった?」
「とっくに」
「お願い!見せて!!」

パンとは顔の前で手を合わせた。
昨日は疲れていてそのまま寝てしまったのだ。
当然、朝起きてもノートは真っ白。
ここは成績優秀なリナリー様におすがりするしかない。

リナリーは仕方ないわね、とため息を吐く。

「これっきりだからね。今度見せてほしかったら貢物持ってきてよ」
「へぇーい」

リナリーは自身の机へと向かった。
はカバンから教科書やペンケースを出す。
そしてチラ、と黒板の端に目を向ける。
黒板の端に、先生の整った明朝体の字で書かれた、今日の予定。

(きょうは交流会・・かぁ)

交流会。
それは新入生である一年生と、二、三年生が交流を持つために設けられたイベントだ。
午後の授業はなく、午後は全学年がホールに集まる。
そこで学年ランダムに分けられたテーブルで、飲み食いをするというもの。

授業がないのは嬉しいが、二、三年生と上手く喋れるのかと思うと不安になる。
それに普段ならともかく、もしかしたらあの怖い会長とまた会ってしまうのではないか。

思わず眉をしかめると、リナリーがポンとノートをわたしてくれた。

「はい」
「ありがとーリナリー!」

は不安を頭の隅へ追いやり、椅子に座るとシャーペンをカチカチと鳴らした。














「ユーウちゃーん!」
「殺すぞラビ」

久しぶりに剣道部の朝練に行って来た帰りの神田はひゅっと竹刀の先をラビに向けた。
ラビはそれを慣れた様子で横へやると、すいっと一枚の紙を差し出す。

「冗談冗談。ほい、これ」
「あぁ?・・・・交流会の席決めのクジじゃねぇか」

受け取ったものの、神田はそれをつき返す。
しかしラビは受け取ろうとしない。

「それは会長のんさ」
「はぁ?」
「会長の席番号はそれ」
「・・ちょっと待て。これじゃクジにならねぇ」
「それでいいの。・・・・裏でちょろちょろ動いてるみたいさ、あれ」

声のトーンを落としたラビに、神田はぴくっと反応する。
神田もまた声を低くする。

「・・・操作してるか?」
「クジを配るのはそれぞれのクラスの教師さ。クラスの人間抱き込めば、難しくない」

神田は手に持っていた紙をすっと懐にしまった。
ラビはそれを確認すると、神田の横をすり抜けて歩き出す。

「万が一あれと一緒になっちゃったらごめんさー」

呟くように、独り言のように聞こえた声。
それに対し、神田は馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

「はん。てめぇのことだから絶対あいつ等とあわねぇように細工してあんだろ」

ラビは振り返らず、ぺらぺらと手を振って階段を下りて行った。














(どうしてこんなことにぃぃぃ?!)

は何度も自身の手にある紙を見つめる。
たしかに紙には『67』と書かれている。

だがその『67』の席は。

だめだ。

って言うか無理。


4時間目の英語をリナリーのノートで切り抜け、昼休みはお弁当を食べ、いよいよ回ってきた行事、もとい、交流会。 
ホールに入るまでは良かった。

そこでうちの担任代理、バクちゃん教頭からクジをひく時に、迷ったのがいけなかったのか。
今日英語の予習をやってこなかったのがいけなかったのか。
昨日の晩掃除をちょっとサボったからいけなかったのか。
心当たりは考えれば考えるほどありすぎるが、それでもなんでもあんまりだ。


こういうときに頼りになるリナリーはと言うと、可愛い可愛いと上級生に引っ張られてどこかへ消えてしまっている。
まだ始まって一週間のクラスで、それほど仲のいい人もいない。

(ど、どうしよう・・・)

はうなだれた。

『67』の席のテーブルには、オレンジの髪とストレートの黒髪が見えた。
















神田君のお隣です。

けい

06,05,14(08,04,02改)