「それ、ほんとですか?!」
「えぇ。私はいつもやってるわ。とってもいいわよ」
「今日帰ったら早速やって寝てみます!」
目を輝かせたは、女性にお礼を言い、早急に湯船から飛び出した。











+cat poison+








「ただいまー」
「遅い」
神田がベッドの上で、毛を逆立てた。

「ごめんごめん。いや、人に会ってね」
「人?」
「ほら、食堂であんた抱っこしてた人」
「あぁ、アイツか」
「知り合い?」
「・・・いや別に」
言って神田はプイとそっぽを向いた。
返事するまで間があったのが気になるが、はそんなことより先ほどその女性に言われたことを実行したくてたまらなかった。
まず、準備だ。

は洗面所にいくと、タオルをお湯につけ、絞った。
そして神田のところまで行くと、ひょいと抱き上げた。

「なっ!お前!」
「黙ってじっとしてて。」
神田を膝の上に乗せて、はベッドに座る。
そして神田の前足を手に取った。
やっぱりというか、ピンクの肉球が汚れている。

そこに暖かいタオルを当てた。

右前足、左足、左後ろ足、右足。
丁寧にぬぐってやってから、そのタオルを一回広げて綺麗な面を出し、最後に体全体を軽く拭く。


「はい、おしまい。」
「・・・・・」
神田は動こうとしない。
じっと目を閉じている。

「どうしたの?ユウ」
「・・・明日もやれ」
言って神田は目を開いた。

「はい?」
「だから!明日もやれといってるんだ!」
「・・・気持ちよかったの?」
「・・・・」
神田は無言のままの膝を降りた。

どうやら心地よかったらしい。

がクスリと笑うと、神田はギッとをにらんだ。
あわてて立ち上がり、タオルを洗面台で洗ってから干した。

ベッドの上でくつろぐ神田を抱き上げ、ベッドカバーをはたく。

神田に汚い足で乗られていたせいで、少し汚れがついている。

明日神田の服と一緒にクリーニングに持って行こう

そう思って、はベッドに入った。
もちろん、神田は抱いたまま。

「お前!寝るんだったらはなせ!」
「やだ。一緒に寝るの」
これだ、これがしたかった。

先ほどの女性に教えてもらったこと。
『猫って、抱っこして寝るととってもあったかいのよ?』

確かにぬくい。
じんわりと、ぬくもりがおなかに広がる。
これはいい。

冷え症のにとって、この季節は何よりありがたい。

!離せっつってんだろ!」
「やだ」
言っては抱きしめている腕をぐっと強めた。
胸の前あたりで神田は暴れる。
「やだじゃねぇ!引っかくぞ!噛み付くぞ!」
「あーもう煩い!お世話してあげてるんだからこれぐらいいいでしょ?!」
怒鳴り返すと、神田は突然静かになった。

そしてもぞもぞと小さく動く。
「・・・息できねぇから腕緩めろ」

は考えた。
腕を緩めたら逃げるかもしれない。
でも窒息死されたら・・・・

は腕を揺るめた。
すると神田はの顔の前に顔を出した。
その場所で、神田は横になる。

どうやら観念しているらしい。

は神田の背中を撫でた。
「お休み。ユウ」
「・・・あぁ」
目を閉じた神田。
もぬくもりの中で頭がボーっとしてきて、自然と瞳をとじた。










(くそ!なんなんだこいつは!)
目の前で無防備な寝顔を見せているこいつ。
小さく唇が開いていて、そこからすぅすぅと寝息が漏れている。

神田は顔が熱くなった。

さっきだって突然顔を胸に押し付けられてあせった。
その上パジャマなせいか、ノーブラだったのだ。

神田は当然暴れた。
それでやっとこの状態に持ち込んだはいいが、眼前でこれでは眠れない。

(・・・・結構いい面してる)
素直に可愛いと思えないところが、神田だ。

「ん・・・」
小さく唸っては腕をぎゅっと強めた。

(うわっ!)
後ろ足が。
後ろ足が。


当たっている。







猫は猫でもやはりオス。
神田はその晩眠れなかった。
















胸押し付けられた神田。
以外に純情ボーイ。



けい



06,03,15