全身を覆う艶やかな黒い毛はなんともいえない深みを帯びているし、まっすぐすっと伸びた尻尾は柔らかげ。
かすかににじみ出るは気品、というよりプライドと言った方がよいだろうか。
完璧に優美な黒猫が、神田が着ていた服の下から出てきた。
そのことを理解するのに、は五秒ほどを要した。
+cat poison+
「っ?!?!か、・・・かんっ!かんっ!!!」
舌が上手く回らない。
神田の服を握り締め、上手く言葉を発せないを不審に思ったコムイも覗きに来た。
ひょいと覗き込むと、コムイはすぐに目を輝かせ始めた。
「やったぁっ!神田君?神田君でしょう?!」
「うっせえぞ馬鹿コムイ!!!なに飲ませやがった!爆発するなんて聞いてねぇぞ!!!」
その低い声はたしかに猫から発せられている。
人語を話していることと、神田と同じ声を発していることには多少驚いたが、それは『やはり』という驚きだ。
そうだ、この黒猫はコムイのみょうちくりんな薬を飲まされた被害者である神田。
それ以外にはありえない。
「か・・神田・・だよね?」
9割方わかりきった答えを、は恐る恐る訊いた。
「あぁ?なに寝ぼけたこと言ってやがる。・・・?。、お前なんかでかくないか・・?っておぉっ?!」
怪訝な声を発した神田黒猫はソファの上から転げ落ちた。
どうやらまだ自分が猫になったと気がついてないらしく、人間の気分で身を起こそうとしてバランスを崩したのだろう。
ソファから落ちてわけがわからない神田猫を、コムイは歩み寄ってひょいと抱き上げた。
「うわー見事な猫になったもんだねぇ。さすが僕!」
しみじみとした様子でコムイは何故か自身をほめる言葉を言った。
「っ?!コムイ?!お前まで何でそんなにでかく?!っっつーかなんで俺を持ち上げてやがる?!」
まだわかってないらしい。
コムイの手の中でじたばたと暴れるも、コムイは神田を体から離して前足の脇を持っているものだから、到底手は届かない。
コムイは首をかしげて、あっとあることを思いつくと、に呼びかけた。
「・・くーん。鏡」
呆然とその様子(神田)を眺めていたは、自分の名前が呼ばれたことにハッとなるとあわてて回りを見回した。
「そこの本棚の右から二番目の引き出し!」
言われた場所を開けると、布が目に入った。めくってみると、古ぼけた鏡が入っていた。
それを取り出し、はいそいそと神田とコムイの元へ急ぐ。
「あぁ?!俺に鏡見せて何しようって・・・は?」
鏡のほうに首をもたげた神田猫は大きなアーモンド形の目をさらに見開いた。
そしてしばし鏡に映った、自身の変わり果てた姿を見つめる。
「・・・・俺?」
鏡を持ったと神田を持ったコムイは一緒にうんとうなづいた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
悲痛な神田黒猫の叫びは執務室に無情に響いた。
        
神田かわいそうですねぇ。(ニヤニヤ)
けい
05,11.15 |