「やっと・・やっとできた・・!」
緑色のぐつぐつとした液が入ったフラスコを掲げ、コムイは誇らしげに宣言する。

「これぞ世紀の大発明ー!」
仕事しろよ。






+cat poison+





「で。なにそれ」

「ふっふふん」
嬉しそうに、どこか得意げにコムイは机の上のフラスコを持ち上げた。

小指を立ててそれをずいとの目の前へ突き出すものだから、は思わず半身を引いた。

「こ、れ、は、ね!」
くるりと団服の裾をはためかせてコムイは高らかに言い放った。

「変身できるんだ!」

「・・何に?」

「・・・さぁ?」
悪びれた様子もなく肩をすくめるコムイ。

はやってられないとばかりに席を立つと、部屋を出て行こうとする。
それをコムイはあわてて引き止める。
「え?ちょっ!何で行っちゃうの君!」

「私はもっと大事な用で来たんです。でももういいです。後は自分で何とかします」
はきはきとそういうと、は扉に手を開けた。

と、突然扉がデコに衝突した。

「たっ!」
「・・?」

怪訝な低い声。
見上げると、神田がいた。


「・・突然扉開けないでよ」
「・・・そこにいるそっちが悪い」

謝りもせず、神田はの脇をすり抜けると、先ほどが座っていたソファにどかっと座る。
そしてコムイの机の上に書類をどさっと放り投げた。

「今回の任務の報告書。ファインダー一名重傷。後はかすり傷程度」
淡々と言う神田の言葉を、神田に背を向けたコムイに聞いている様子はなかった。

「それはそれはお疲れ様でした神田君!怪我はないかい?」
「だからファインダー一名以外は」
「まぁまぁ喉も乾いているでしょう!さぁ!美味しいお茶でもどうぞ!」
振り返ったコムイが持っているのは紙コップ。丁寧にストロー用の穴がある蓋までしてある。
そこにぷすっとストローを射すと、はいと神田に差し出した。

(あれって・・・)
先ほどコムイが握っていたフラスコは、ない。
十中八苦、あの中身を見えなくした紙コップの中身は・・

は扉からはなれてあわてて神田に駆け寄る。
「かん」

「気が利くじゃねぇか」
神田はにやりと笑んでそれを受け取ると口に運んだ。

「あ〜!!!!」
「やった〜!!」
やっちゃった、という声と、やったゼ!という叫びが同時に聞こえた。

「なんだ?いった」

っぽん


間抜けな音がして、煙がもくもくと立ち上がる。



「だ、大丈夫?!神田!神田!」

「何に変身したんだい神田くーん!!」

煙がはれてそこには・・神田の服しかなかった。

「きっ!きえ!かっ神田が消えちゃったじゃない室長!!!」
「えーうそー」
あまり緊張感のない声でコムイは言う。

「神田!神田!!!!」

はソファーの下を調べるが、神田がいる様子はない、というより、明らかにいない。

「どうすんのよ室長!エクソシスト消えたってどう教団に説明すんの!」
「うっ・・ん」
「?!」

が叫んだ時、かすかにうめき声が聞こえた。
あわてて周りを見回すも、あの長身黒髪の青年は見受けられない。

「あ!もしかして神田君、透明人間になっちゃった?!」
嬉しそうにコムイがいうと、もそもそと神田の衣服が動いた。

「やった!透明人間だ!」
何が嬉しいのか、コムイはそう声を上げると、ソファーに向かって言って大きく手を広げる。

「さぁ神田君!どこにいるんだい?!」
返事をするとでも思っているのか、コムイはキョロキョロと透明になった予定の神田をさがす。

その時、また服がもそもそ。

(・・・ん?)

でてきて神田くーんと叫び続けているコムイをよそに、はドキドキしながらソファーに崩れている神田の服を見つめる。

(も、もしやご、ごき・・・?!)
ありうる。この書類がカーペットのような状態になっている汚い部屋では十分ありうる。
別に虫を見れば悲鳴をあげるほどではないが、やはりあれは嫌いだ。

でも神田の服をあの生き物の上においておくわけにはいかない気がする。

(・・・よし)

はそおっとソファーから離れると、ソファーの背もたれの後ろに回った。
そして恐る恐る、手と胴体の距離を出来るだけ離しながら神田の服を摘み上げた。

見るのはあまりよろしくないので、は目をつぶっていた。

そこで普通なら、あれはかさかさっと音を立てて動いていく。
が、それがない。

「?」
不審に思って、はソファーを覗いた。




「うっ・・くそ・・・」













艶やかな黒。
整った優美な曲線。












苦しそうに、綺麗な黒猫がそこに横たわっていた。









だ、だめですか?!(必死)
続き物なのですが、多分短いかと・・。
というか、私プロローグだけ書いて後書かないことが多い・・(ダメ子)


ではでは、これからしばし黒猫神田と優雅な大変な日々をお楽しみにv


けい



05,11.12