なんで、どうして?
私の返事はいらないの?
―――――返事。
私は、どう答えるの?
――――嫌だと、思っていた
ねぇ、私は、ユウのこと、どう思ってるの……?
―――――私は…
+cat poison+
泥の中に沈んでいるかのような、そんな気だるさの中、は目を覚ました。
まぶたを開ける動作でさえ、重苦しい。
どこか霧がかったような視界が広がる。
白くもやがかかっていて、良く見えない。
寝起きでは当然のことだ。
ニ三度目を瞬かせて、ようやくぼんやりとした焦点が定まったとき、は一気に覚醒した。
飛び起きて回りを見まわし、呆然と呟く。
「・・・・どこ・・・ここ・・・」
はベッドの上に寝かされていた。
天蓋の付いた豪奢なもので、部屋に有る他の調度品も見るからに高級そうに見えた。
しかしはこんな部屋は知らない。
(・・・・・あっ!)
思いだした。
自分は倒れたのだ。
ユウからの告白に一人悶々しているうちに気が遠くなって、それからの記憶が無い。
「誰かが運んでくれたのかな…」
(それにしても・・・・)
何故倒れたのだろうか。
熱が出ていたなら、今もその症状は続いているはずだ。
しかし寝起きの異様なだるさはあったものの、あれは熱の有るときのそれではないし、今現在、の体に異常は見当たらない。
ここはおそらくゴードン卿の屋敷の一室だ。
とりあえず誰かに声をかけよう、とはベッドから足を降ろそうとした。
バチィンッ!!
「いたっ!」
の足は弾かれた。
思わず足に目をやると、履いていたストッキングの下のつま先は赤く腫れていた。
ジンジンと痛みも伴う。
は痛むつま先を撫でながら、実験とばかりに枕を手に取り、そおっとベッドから外につき出してみた。
枕の先がベッドの端を超えた瞬間、先ほどと同じ酷い音が響き、枕ははじかれての手からふっ飛んだ。
「嘘…何、…これ…」
ベッドから出られない。
どうやらベッドの回りに見えないバリアーでもはられているらしく、触れると痛みと共に弾かれる。
(・・・・閉じ込められた…?)
何故?何のために?
わからない。
もしやエクソシストだと、調べに来たのだと、ばれた…?
そうだとしても、とりあえずここから出なければ。
幸い、このベッドは壁に隣接している。
イノセンスで壁をぶち破れば、逃げられるかもしれない。
騒ぎになるかもしれないが、ここにいてもはじまらない事は確かだ。
はドレスの裾を巻くり上げ、太腿のホルダーから小ビンを引きぬいた。
のイノセンス“アミーリア”。
質量保存の法則を無視し、ビンの中のものを無限に、自在に操れる、というのがの能力。
形状が自在と言う利点から、大体は水をいれてつかっている。
今回も特に何か有るわけではないので、水が入っており、軽く揺らすとちゃぷんと水音がした。
「いくよ、“アミーリア”」
声に反応して、光りだしたビンから水が飛びだした。
無重力状態に有るかのように、水はふよふよとの眼前に漂い、沙汰を待つ。
「bomba a mano (手榴弾)」
そう呟くと、水は空中で一点に固まりの手の中に落ちた。
「よし」
は太腿にビンを収納すると、壁から出来るだけ離れた。
もちろん、ベッド際のバリア−に弾かれない程度の場所に。
は振りかぶって、壁に向かって水の塊を投げた。
すさまじい音がして、壁に穴が開く。
そう思った。
しかし、実際は。
―――ぺちゃん
情けない音と共に、水はばらばらに水滴になって離散した。
「え・・・・?」
いつもはこれで上手くいくはずなのに。
その上ビンに戻るはずだった水は戻らず、ベッドの枕に染み込んでいった。
おかしい。
イノセンスの能力が、
「イノセンスの能力は、無効化されるんですよ、その場所では」
突然の声に、は振りかえった。
        
ヒロインのイノセンスをどうしようか一ヶ月ぐらい悩みました。
結局それ反則だろ、なヤツに。
後々融通利きそうですから。
けい
07,03,18 |