「さよなら」
「・・・・え?」
あるのは過ちばかり
I want it that way
#1 足音
今日、任務から帰ってきた。
帰りに、とても欲しかった本が手に入って。
それは前々から読みたかった本で。
夢中でそれを談話室のソファで読んでいた。
そしたら、が来て、
「今、いい?」
って訊くから
「いいけど・・どうしたさ?」
ぽんぽんと片手でソファを叩く。
『座れば?』
の合図。
でもは首を振った。
その時から、なんだか様子が変だった。
そして、言った。
突然、言った。
「今・・なんて言った?」
「『さよなら』って言ったの」
目を見開いたラビに、ごく事務的には繰り返した。
「・・・なんで?」
出来るだけ、平静を保ちつつラビは尋ねた。
心臓が跳ね上がっている。
頭がキーンと鳴る。
「っ・・自分の胸に聞いてみたら?」
皮肉のように言って、泣きそうな顔をしてはきびすを返した。
そのまま談話室を駆け出て行く。
唖然として行動が一瞬遅れたラビはあわてて立ち上がる。
「ちょっちょっと待っ」
バタン
豪快な音をがして、扉は閉まった。
本を手にぶら下げて、ラビは立ちすくむ。
なんで?
どうして?
先ほど視界の端に、確かに映った。
の涙
「なんで・・」
思わずつぶやく言葉に返事をする者はいない。
ドアを見つめる。
今さっきが出て行ったドア。
きっちり閉められたドアが、の決別の証のように思えて。
(追いかけないと・・・こんなのはいやさ・・・)
そう思いながらも、足はおろか、指一本動かない。
(なんで・・)
「さよなら」
鐘のように頭に鳴り響く、あの言葉。
一番ききたくなかった、きくはずがないと思っていた、言葉。
       
短っ!
続きます。
切ないけど甘いはずです。
けい
05,08,04
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