パコン、パコン。

軽いピン球の音が響く。
ただ今、久勢北中の卓球部は部活動の真っ最中だ。

汗が飛ぶのも気にせず、ラケットを振るう。
卓球場は熱気に包まれていた。

そんな空気をぶち壊すのはいやだったが、いつまでもこんなところでつったっては居られない。
ゆっくりと入り口に歩み寄り、少女は恐る恐る声をかける。

「あの・・・すみません、王華のものですけど」

か細い声の中に『王華』の二文字に反応した部員が一斉に入り口を見た。
突然注目されてしまった少女は慌てて口を開く。

「あ、あの王華の卓球部のマネージャーの、です。ぶ、部長さんはどちらにいらっしゃいますか・・・?」

顔だけ出し、入り口に隠れるようにして、少女は赤い顔でやっとそう言った。












+Tears+










誰一人誘導してくれなければ声さえ掛けてくれない。
ただシーンと静まり返っている。
指差すとか何かしらのリアクションを取ってくれなければ、自分は動けないと言うのに。

もう泣きだしそうだった。


その時、天の助けか。
のんびりとした声が響いた。

「おーちゃんやんか」

振りかえると、一人の男がひらひらと手を振っている。

「あ、遊部さん!」

「どうしたん?もしかして俺にあいに来たとか?」

へらっと笑いながら、その男は近づいてきた。
眼鏡をかけ、長いくるくるした髪を一つにまとめている。

昨年覇王・王華を破った破王の一人、遊部遊だった。

「違いますよ!監督から練習試合の打ち合わせを頼まれて…。岩熊さん、いらっしゃいますか?」

「あー今ちょうどおらんねんよ。やから俺聞いとくわ。主将代行やし。」

「あ、じゃあお願いします。えっと・・・」

ここで立ちながら話をするのでは書類も見せにくければメモも取りにくい。
どうしたものかと考えていると、遊部が卓球場と反対側を示した。

「立ち話も何やし。部室おいでや」

「はい。ありがとうございま」

「部員以外を部室に入れるな、遊部」

低い淡々とした声が突然聞えた。



知っている、この声。
当然だ。
聞きたかったから。

ずっと、聞きたかったのだから。



立っている人が誰だか分かっていた。
緊張しつつ、喜びに胸躍らせながらはゆっくり振りかえる。

「か・・わ、川末君、こんにちは」

首にタオルを掛け、かすかに汗ばんでいる、川末涼がそこに居た。
いつも仏頂面であるが、今日はその眉の間にくっきりと皺ができている。

「遊部に付いて行くなといっただろう。こいつは無類の女好きだ」

「ちょっと!それはひどいんやないか?」

「ひどくない。・・・それで、なんでここにいる」

「あ、練習試合の件で・・・」

「俺が聞く。遊部、ちょっと一年を見ててくれ」

「川末だけずるいわぁ」

羨ましそうに声を上げる遊部を無視して、川末はさっさと歩き出す。
どこにいくんだろう、と見ていただが、振りかえった川末が不機嫌そうに言った。

「さっさとこい」

「う、うん!」

は小走りに川末のもとへと急いだ。











「あーあ。」

一人残された遊部は呟く。

「川末のやつ、嬉しそうな顔しよって」

軽く笑って、遊部は一年生が疲れで倒れているであろう場所に向かって歩き出した。












やっちまいました・・・が・・・現在P2!は最下位独走中・・・。
読んでくださる方いるのかなぁ・・とちょっと心配だったのですが、川末君好きなのでかいてしまいました・・・orz


後編もお楽しみに!



けい

07,01,07