たまらんわぁ

ほんま、興奮する

いや今授業中やねんけどな、やばいねん

やばい






――――斜め前の女の子、さんの足。










＋授業中に見つめあえ＋












最近席替えしたねん。
窓際の後ろから三番目。
窓際やーええやんーとかうきうきやってんけど最近暑うてな。
まだクーラー入れられへんから窓開けてんねんけどむわってするわ日差しは暑いわでほんま最悪や。
・・・と、思っとった。さっきまで。五分前まで。

見つけてしもた。この国語の時間に。めっちゃええ美脚。

はぁ・・・ほんまええわぁ・・・
何で今まで気がつけへんかったんやろ。俺あほや。

くるぶしあたりはきゅっと締まってて、ふくらはぎはすらっとしつつも女の子っぽく少しふっくらしてる。
もちろん透けるように白い。
太もも、見たいなぁ。もうちょっとスカートあげてくれへんやろか。
あー、でもええよ。そのちょっとしたチラリズム感覚がええよ。うん。

っていうかなんで素足なんやろ。いつもは･･･たぶんハイソックスはいてんのに。
水でもかかってしもたんやろか。
誰かがかけたんやったら俺はそいつにめちゃくちゃ感謝する。アイスおごったる。
だってこんなええもん見れたんやもん。

あ、ちょっと動いた。
・・・あーあーあー！！足の甲が、甲が！ええよええよ、そのまま、そのまま！
どーしよ俺、ほんま興奮してる。
っていうか国語の時間にこれって、どうなん。
周りの奴らほとんど寝てるし、さんもたまに目こすってあくびしながら眠気と戦こうてる。

・・・あ、さんって、かわいいかも。

今までちゃんと見たことなかったしなぁ。（っていうか興味なかった）（だって同じクラスの女子とか幼いやん）
きれい系ではないけども、まぁそこそこかわいいんちゃうか。
肩上のボブの髪がカーテンみたいに横顔にかかってて、たまにうっとおしそうに耳にかけるんがなんかちょっといい。

あ、こっち見た。
これは仲良うなっとかなあかん。まずは第一印象やな。

俺はにこっと笑ってひらひらと手を振ってみた。
おずおずと手を振りかえしてはにかむように笑ってくれたら、もう完璧やね。俺のとりこやね。
ちょろいわ。さぁ、手を振れ！

・・・え？なんでしかめっ面してんの。
どうしたん。俺の笑顔が気に入らんかったん？まさか。
この笑顔は百万ボルトやで。これでおちひんかった女はおらん。（幼稚園の恵美先生もメロメロやったし！)

え？なんで？え？顎で後ろさしてる。え？あ、後ろ？

・・・・振り返ったら、国語の千田が立ってた。


「忍足、授業中に何してる」
「授業、受けてますけど」

俺はシャーペンで机の上のノートと教科書をとんとんと叩いた。
ちゃんとラインマーカー引いてるもん。
あの白魚のような足ガン見してたけど、耳はちゃんと声聞いてたもん。

「・・・ちゃんと前向いてろ」
「前向いてますけど。あ、せんせー、黒板の博士の『博』の字、上の点忘れてませんかー」
「なっ！！・・・次、坂上12行目から読んでろ！」

千田があわてて黒板に向かっていって荒々しくチョークを取る。
教室に失笑が起こり、ついで坂上のてきとーな朗読が流れ出した。

国語教師が漢字間違えんなや。っちゅーか千田ごときが俺に絡むなんぞ、百年早いわ。

たぶんもう千田は絡んでけぇへんやろ。（肝っ玉小さそうやし)

これで俺は心置きなくさんの足を・・・・あーーー！！！！
あせったせいで机ガタンて動かしてしもた。周りの奴らがこっち見る。
こっち見んな、お前ら寝とけ！

・・・あーあー・・なんでひざ掛けなんかしてんの。どっからだしたん。今6月やで。ほんまないわ。

恨みをこめて俺はさんを見た。
そしたら思いが通じたんか、さんの目線がこっち向いた。
じっと見てる俺に気がついて、ちょこっと首をかしげる。

小動物じみてるけど、嫌味な感じはせぇへん。・・・あれ、なんかかわいく見える。どうしたんや俺。
今まで『』なんて、「あークラスにおると思うで、その子｣程度の認識やったのに。どうしたんや俺。

しばらく俺はさん見てた。
さんも俺見てる。

なんかせなあかんと思っても表情どころか口端一つ動かされへんかった。
ただ、見てた。いや、見詰め合ってた。


ふと、さんの口が小さく動く。

『なに？』

口パク。
それ見て、なんかの呪縛が解けた気がした。危なかった。俺、なんか知らんけど危なかった気がする。

『なんもないよ』

色気たっぷりの目線でそう口を動かすと、さんはちょっと赤くなった。
ほんで口をきゅっと結んで前向いてしもた。

足もええけど、本人もなかなかええかも知れへん。
久しぶりに燃えてきたで。よっしゃ。

とりあえず、休み時間なったら話しかけよ。
さっき千田がきたん教えてくれたお礼せなあかんし。

そやな、今度の日曜の映画でもさそてみよか。






[END]