外は雨。
時たま突風が吹き、窓を雨が打つ。

銀さんはいつもの死んだ魚のような目で唐突につぶやいた。

「パフェ食べたい」







+題は、無い+













「じゃあ行きます?」

洗い物をおえて、は前掛けで手を拭きながらソファに歩み寄った。

「どこに。銀さんちょっとお疲れだからあんまり遠くに行きたくないんだよ。そこんとこわかってんのちゃん」
「すぐそこですよ。歩いて3分。新しい喫茶店ができたんです」
「早く用意しなさい」
「はいはい」



今日の万屋には新八も神楽もいなかった。
新八はお通ちゃんのライブが近いとかでなんかの練習に行っているし、神楽は酢昆布の木なるものを探して定春と旅立った。

なので。
しとしとと雨の降る中。
こうやって銀さんと二人きりで一つの傘を差している。


「ほんとーにこの道であってんの?なんかもう5分ぐらい歩いてると思うんですけど」
「うーん、この辺だったと・・・」
「え、なに、ちょっと、感ですか。マジですか」
「・・・すいません」


失敗した。
この辺だと思ったのに。
でもあの喫茶店の周りのような景色とは全然違う。

(雨の中せっかく出てきたのに・・・)

しゅんとなってしまった私の頭を、ぽんぽんと銀さんが撫でた。

「謝んなよ」
「すいません」
「謝るなって。そら、帰るぞ。パフェはまた今度」

言って、銀さんは私の手を取った。
大きな手。ごつごつしている。少し日に焼けている。
ぎゅっと握るでもなく、かるく乗せるように、銀さんと私は手をつないでいた。

「今度ちゃんと友達にきいときますね」
「そーしてちょーだい」
「なんか甘いもの買って帰りましょうか」
「いや、いいや」
「でも、パフェ食べたかったんですよね?じゃあ何か代わりにでも」

言いかけて私はやめた。
ずっと前を向いていた銀さんが傍らの私を見下ろしている。
じーっとみて、そしてにや、と笑った。
私は体をこわばらせた。

こういう顔をしたときは、絶対よろしくないことを考えている。


「銀さん。帰りましょうか。ね、ほら歩きましょうよ」


言ってみるが、一つしかない傘を差しているのは銀さん。
なので、銀さんが動かないと私も動けない。


「銀さん・・・?」


おそるおそる伺ってみると、銀さんは突然私の肩をつかんだ。


「ひわっ!」


私を抱えるようにして、銀さんは早足で歩き出す。


「練乳とチョコソース・・・あと生クリームも必要だな」
「え?なに?え?」


なにやらぶつぶつと銀さんは呟いている。
・・・イヤな予感が。


「ぎ、銀さん・・・」
「アイスクリームも・・・ん、どうした
「な、なにをおっぱじめるんですか・・・?」


恐る恐る聞くと、銀さんの足がぴたりと止まった。
そしてにやぁっと笑う。


ちゃんをパフェにする」



・・・このど変態。





でも、好きなんだよなぁ

あーあ、今日寝れるかなぁ






・・・好きなんだよなぁ











[END]




はい、初銀さん。こうやって妥協していくことが銀さんをつけあがらせることに気がついていないヒロイン。

もっと銀時のゆるーい、つかみ所の無い感じが出したかったなぁ。



けい

08,04,13