「はじめまして。アレン・ウォーカーです」
始めて見た彼の表情は、儚げだった。
まるで、散りゆく花のようで。
4.しあわせの花束を、あなたに
「アレン君ってなんか近寄りがたいよね」
ソファーに寝そべってがポツリとつぶやいた。
リナリーは報告書から顔を上げて小首をかしげた。
「そう?いっつもニコニコしてるのに・・?」
「うーん・・なんか、さ、あの笑顔がさ、こう・・なんていうの?」
は手で不可思議な動きを宙に形作る。
「とにかく、話しかけにくいというか、悲しげというか・・」
コムイ室長に紹介された。
「アレン君だよ。新しい入団者で、エクソシスト。アレン君、こちらが科学班のマドンナ、・君」
「止めてくださいよ、室長!」
「あはは、確かに可愛い人ですね」
「え・・・」
「アレン・ウォーカーです。」
手を差し出す白髪の可愛い少年。
その微笑が
儚くて
は出しかけた手に一瞬、本能的に躊躇する。
が、失礼だと感じあわてて手を出したのだった。
「悲しげ?」
「うん。なんか、あの笑顔がね・・悲しく見える」
「・・・気のせいじゃない?」
「そっか・・そうかな・・・そうだよね・・さて!」
自己完結しては勢いをつけて立ち上がる。
「帰って寝るわ!」
ピッと敬礼をしては扉に歩み寄る。
「えーずるい!」
「がんばってリナリー」
ニコニコと手を振っては取っ手を引いた。
思い過ごしかな・・・
彼の頬の傷
あれは養い親をAKUMAにした呪いだと聞いた。
幸せ・・・では、ないだろう
でも不幸でもない・・と思う
不幸そうには見えなかった
ニコニコしていたし、冗談も言って笑って・・・
なのに、何でこのもやもやが消えないのだろうか
考えているうちにいつの間にが自室の前についていた。
鍵を出そうとポケットをまさぐった時だった。
「さん?」
「あ・・・」
やわらかい呼びかけに振り向くと、廊下の先からアレンが歩んできた。
「お久しぶりです」
「う、うん・・・今任務から戻ったの?」
考えていた人物が目の前にあらわれて、どぎまぎする。
「そうなんですよ。これが空振りで・・」
あははと苦笑いするアレン。
それっきり、沈黙が流れる。
「アレン君は、幸せ?」
「・・・・え?」
言ってはっとしたはばっと自身の口を塞いだ。
「ごごごめん!今のなし!忘れて!じゃ!」
言うや否や、部屋の鍵を差し込んで回す。
「え、ちょっ!」
背から聞こえるアレンの言葉にもかまわず、部屋に飛び込んだ。
ドアを閉めて塞ぐようにドアを背にしていると、遠慮がちな声が聞こえた。
「あの・・さん」
「・・・」
「さん・・聞いてます?おーい」
「・・・・・・・ごめん」
「・・さん」
「本当に変なこと言った。ごめんアレン君」
しばらくの沈黙。
靴音が聞こえないということは、まだドアの前にいるんだろう。
は動けなかった。
アレンもまた、そのようだった。
フイに、ドアにドンという音がしては飛び上がった。
が、すぐにずるずる、トサという音も聞こえ、きっとアレンがドアにもたれて座り込んだんだろうと思った。
(何か・・あるのかな・・?)
もう行ってと言う事もできた。
が、
今は・・
もドアの前に座り込んだ。
ドアの板を間に、二人は背中合わせに座る形となった。
沈黙を破ったのは、アレンだった。
「・・幸せかと訊かれると、すぐには答えられません」
今の
これは呪われた証だから
「でもかといって、不幸でもありません」
仲間に囲まれて、帰る家があって
「複雑なんですよ。自分でも、分からないぐらいに」
自分でも分からない
喜べばいいのか
十字架を背負って、苦悶にとせば良いのか
きっと後者だと思いつつ
それでも、喜びが隠せなくて
温かさに、いつかそれは消えゆく物だと
自分に言い聞かせて
「・・アレン君の笑顔がね、ちょっといやだった」
「え?」
突然の言葉にアレンが妙な声を上げた。
「やっと分かったの。どうしてか」
迷いなく嬉しい笑顔じゃなかった
すべてを振り上げての笑顔じゃなかった
だから
「ねぇ、どうすれば幸せになれる?」
「・・・・僕でも、幸せになっていいんでしょうか」
他人事のように、あざけるようにアレンはつぶやいた。
その言葉に反発するようにきっぱりとは言う。
「私が幸せにしたいの」
きっと幸せに笑ったら、すごく、素敵で、大好きな笑顔だと思うから
花が咲くように、笑って欲しいから
それが見たいから
「ありがとう・・ございます」
その言葉に、アレンの口元には自然と笑みがこぼれた。
幸せに、と言ってくれる人がいる
「じゃあ、我侭言っていいですか?」
僕が幸せになれる方法
自分で分かっていた
でもそれを故意に求めようとはしなかった
「僕の、大切な人になってください。」
過ちは繰り返さない
そう決心する枷に
「うん」
自分でもびっくりするほどすんなり出た言葉。
が立ち上がると、扉が音をたてて開いた。
「アレン君が幸せになれるなら」
それが私の幸せであると、疑わないから
アレンの笑みは、やっぱり花が咲くようだった。
[END]
初アレン夢。
けい
05,08,29 |