エクソシスト、神田(下の名前は知らない)。
東洋人。髪、目、共に黒。
さらさらの艶やかな髪は高い位置で結い上げられている。
対アクマ武器は刀型『六幻』。
短気、目つきが悪い、オマケにすぐ怒鳴る。
廊下では前方に見えた瞬間に道を変えるのが得策。
任務が一緒になったら部屋の荷物をまとめて(葬式の準備をしやすく)おくこと。
ファインダーはみんなそう言う。
「・・・・・・ふざけるんじゃないわよこのマッドサイエンティスト」
眼鏡にベレー帽、白い団服に身を包んだ細目の男は、机の上の書類の間からこちらを見ている。
机に両肘を突いてニコニコと微笑むいつものスタイルのコムイが発した言葉に、はにらみつけてそういった。
2.駆け引きなんて、うまくなくていいから
「どうして?」
コーヒーを片手に持ち上げてコムイは小さく頭をかしげた。
「どうして?じゃないわよ!何であたしがあんなヤツと」
「あれ?君、神田君と面識あったっけ?」
「ない!でも噂は耳が痛いほど聞いてるわ。とにかく、一人で行く!」
「そういったってねぇ。あそこらへんは治安も悪いし・・・第一君一人で持てる量じゃないんだよ?」
コーヒーを一口すする。後に口元に微笑を浮かべる。
「うーん。やっぱり三番かなっ」
ビーカーの番号だろう。
万年常春のようなこの上司を尻目に、は何とかこの『神田同行』と言う状態から抜け出そうか思案をめぐらせた。
は先ほど、「町までお使い行ってきて」とコムイから言われた。
それは、あまり街をぶらぶら出来ないにとってはこの上ない申し出で、はすぐに是の返事をだそうとしたが、
「神田君も一緒にね」
という言葉に一瞬瞠目した後、キレたのだった。
「じゃあ別の人を・・・」
「あいにくと、みんなではらっちゃっててね」
肩をすくめるコムイに、ビッとはある方向を指し示す。
この執務室で唯一ペンの音が途切れない人物を。
「じゃあ!あそこでがりがり書いてるひえぴたリーバー班長を!」
見ると書類に埋もれながらおでこにひえぴたをつけたリーバー班長が目玉を落とさんばかりの勢いでペンを一心に動かしている。
無精ひげが目立つその顔には、もはや疲労感を越えた何かがあった。
その状態はコムイのこの優雅なコーヒータイムのせいで切りつまっていくのだが、コムイはそんなことなどそ知らぬ顔で他人事のように言う。
「あーだめだめ。彼は貴重は人材だからねー」
「神田に計算させればいい!」
すかさず叫ぶ。
が。
「彼はだめ。計算は無理な子なの。」
それでは言い返しようもない。
(何で計算できないんだ!!クソッ神田(すでに呼び捨て)め!)
「でもさー神田君にもいいとこあるよ?」
「はぁ?」
「だってさーあの美貌でしょ?」
確かに美人だとは思う。
「あのさらさらの長い髪」
確かにあれは一回さわってみたい。
「そして肉体美!」
あーそういや前に森で鍛錬しているとこを見た。きれーに筋肉がついて・・
「じゃなくて!あたしが言ってんのはアイツの容貌じゃない!性格をいってんの!」
あわてて首を振っては怒鳴った。
「きいた話によると冷酷無比!天上天下唯我独尊!おまけに口から出るのは皮肉!皮肉!皮肉の嵐!
それに天ぷらそばしか食べないって言うじゃない!」
「最後のは関係ないんじゃ・・・」
「うるさいわねぇ。と・に・か・く。アイツが行くなら私は行かない。私が行くならアイツと一緒は嫌。わかったわね!」
コムイの言葉を両断する。
そして返事も聞かずに回れ右をして出口、基ドアに大またで歩み寄る。
そして最後にコムイを一睨みすると、ドアを割れんばかりに閉めてでていった。
がっがっという荒々しいブーツの音が通り過ぎて行く。
聞こえなくなったところで、ドアを見つめていたコムイはふいにカップのコーヒーを飲み干した。
「うーん。前途多難・・・だねぇ?」
独り言のようにも聞こえるそれ。
が、その声はある人物に向けられていた。
「・・・うるせぇ」
本棚の裏でその人物はちっと舌打ちをし、ドアに歩を進めた。
「神田君」
呼ばれて人物は振り返る。黒髪が弧を描く。
柳眉をひそめ、神田はコムイを見据えた。
「なんだよ」
「僕が出来るのはここまで。あとは君しだい・・・ね?」
「・・・・分かってる」
またちっと舌打ちして神田はきびすを返した。
出掛けの背中に
「明日の朝9時に門番さんの前ねー」
と、コムイが声をかける。
神田は今度は振りかえらず、そのまま出て行った。
「うーん。・・大丈夫かな・・?」
「なにがです?」
「ん?」
独り言のはずの言葉に思わぬ返事がかえり、コムイは右を見た。
手に持った書類の山で前が見えないせいで、リーバー班長がひょこっと横から顔をのぞかせる。
「ま、なんとなく分かりますがね・・よっと」
どさっと言う音と共にまたコムイの机の上に山が出来た。
「神田の初恋ってとこでしょう?」
あのすさまじい状況でも、班長の耳はしっかり機能していたようだった。
「うん。神田君にも遅い春が来たねぇ・・」
「青そうですけどね。」
「ま、なんとか僕が薔薇色にしてみせるよ」
わざとらしくため息をつく。その顔に映るは、微笑。
明らかに楽しんでいる、たくらんでいる。
リーバーは神田とを哀れに思った。
が、まぁ、他人の恋愛模様。面白くないわけではない。
自分も傍観しておこう。
ペンもハンコも握らず、嫌そうに書類の一枚をつまみ上げるコムイ。
にしても、この室長。この情熱を仕事にも向けてほしいものだ。
「さ、お話終わったんならちゃっちゃと片付けないと、また書類に埋もれますよ」
「リーバー君のいけず!」
「はいはい」
「しっかしまぁ、神田君も難題を選んだもんだ」
[END]
なんかかけ引きなんて上手くなくっていい・・・・って言うかへたくそですね、神田。
にしても、会話してない・・・。
けい
06,11,17 |