私は貴方に会えて嬉しい
ある日、俺の腕の中で君が呟いた
もしも一人になったら
私の分も 幸せになって
今
君の声が
響いてる
1.わたしは、あなたに出会えてうれしい
俺の足が、もう少し速ければよかった。
槌がもう少し長ければ、大きければよかった。
俺が君の傍にいればよかった。
君から離れなければ・・・
離れたくなかった。
ずっと一緒にいたかった。
何よりも大切だった。
失いたくなかった。
「!!!」
名前がちゃんと発音できているかなんて、わからない。
ただの咆哮とも言える、それ。
でも、それでも、とにかく君に気がついて欲しくて。
「!っ!!!!」
君を抱いた、俺の手がどろっとした感触を掴んだ。
君には赤なんて似合わない。
どうして、何で赤をまとう?
名前を呼ぶと、振り返って
そして微笑んで、嬉しそうに、その唇で俺の名を紡いだ。
だから俺は君を呼ぶ。
「!!」
君はこことは違う空間にいるように、ただただ、無音だった。
そしてまぶたを震わせると、ひどくゆっくりとその開いていく瞳に俺を映し出した。
「ラ・・・ビ・・」
吐息のような声で君は俺の名を呼んだ。
ヒューヒューと君の息が混じる。
「!」
安堵の息を吐いた。
よかった。
よかった。
生きててくれる。
「ごめ・・ん・・ね?」
何が?どうして?
何故?
「好き・・」
瞬間、の胸が弾んで口から赤い液体がほとばしった。
俺はそんなもの気にしなかった。
ただただ
の瞳が虚ろうように、ゆっくりと閉じていくのを止めたくて
「!!!」
もう一度映し出して欲しくて
「幸せ・・・に・・」
ヒューヒューという音がやむ。
手から重さが抜け落ちる。
「・・・?っ!!!!」
幸せってなんだ?
君がいなくて何が幸せ?
君が『幸せ』なのに。
「私、ラビに会って幸せになった」
あの時の君の声が響く。
「もしも一人になったら私の分も幸せになってね?」
幸せになる?なり方って?
解らない。
俺はどうすればいい?
突然、俺の腹から生温い物が吹き出た。
その色は、のそれと同じ。
前方に、AKUMAがいる。
俺は槌を握りなおした。
動き難い腕を振り上げ、立ち上がる。
一閃させると、あっけなくAKUMAは飛び散った。
そして歩き出す。
一歩一歩。
段々早く。
君を乗り越えて、君をおいて。
走って走って。
君を乗り越えて、君をおいて。
俺も嬉しかった。君に会えてよかった。
だから
君の言葉は、俺の呪縛。
俺はそれを甘んじて受けよう。
すべては、風の唸りに掻き消えた。
[END]
作中でヒロインちゃんの名前しか読んでないラビ(あら)
けい
05,12,08
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